氏名:稲田拓(いなだ・たく)
年代:十代
性別:男性
同居人:あり
職業:ホスト
日時:二〇二〇年四月二十八日
「ええか、世間のことなんか気にすんなよ。うちはうちで営業を続ける。コロナが怖いやつはこの店辞めてもらうで」
開店前のミーティング。普段そんなことしないんだけど、中尾店長がホストを集めた。どうも仲間のなかに、この状況で営業を続けていいものか質問した人がいるらしい。
それに関しては自分も戸惑いがあった。店に来る間に見たお店は、チェーン店から個人店まで全て閉まっていた。「休業」「自粛」そんな言葉が書かれた紙が貼られて。
普通に考えたら休業するだろう。それでも店長からは出勤命令が出た。従うしかなかった。
中尾店長は明確には言葉にしなかったが、上から強く言われているのだろう。だから、僕たちにも強い口調で命令をしているんだと思う。
「店長」
「ん?」
「もしお客様に何か言われたら、どう答えたらいいですか?」
ミーティングの最後に僕は質問をした。全員静まりかえっている。中尾店長は口をゆっくり開く。
「ウイルスはアルコールで除菌できる言うとけ。酒飲んで除菌って言えばええわ」
ジョークなのだろうか。ジョークには聞こえなかったけれど。
「こんなときにうちに来るやつなんかそう言うときゃええねん。頭悪いやつしか来んやろ」
言葉の奥の奥に「俺もこんなときに営業したくない」って本音がいるような気がした。いや、それは僕の願望が強すぎるかな。
このホストクラブは何一つ普段と形を変えずに営業を続ける。感染対策など一切しない。まあたしかにホストがマスクをする姿もそれはそれで滑稽だとは思う。だけど、この有様だとクラスターが発生するのも時間の問題だと思った。
僕の予想は的中し、お店は大規模なクラスターが発生した。誰かは分からないが、発熱の症状があり店長に報告。すぐさま、ホストとスタッフ全員に「今日は休め」と命令がくだった。
僕も熱がある。たまたま風邪を引いたなんて思えるわけがない。確実に自分も新型コロナに感染したんだ。だけど……。
休むように命令が下った直後に、僕のスマホに着信があった。中尾店長からだった。
「ライか?」
「はい」
「お前、なんか症状あるか?」
言葉の圧は電話口でも感じる。僕も馬鹿ではない。このあと何を言うかは分かりきっていた。
「一応、熱がちょっとだけあります」
「ええか。絶対に病院にうちのこと言うなよ」
「……分かりました」
「出来れば病院にも行くな。分かったな」
「はい」
「言うたらどうなるか分かるよな?」
僕の働くあの店は合法では無い。風営法だとか、何から何まで引っかかると思う。
そもそも僕はまだ十九歳。そんなやつが働いている時点で、あの店が闇であることは十分証明できた。
つづく
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もうちょっとだけ書き続けてみようと思います
まだ書いてる途中で、この先どんな展開になるかわかりません
書いてはすぐに公開してを繰り返すと思います
それでも良ければ、読んでください
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