氏名:船田智子(ふなだ・ともこ)
年代:五十代
性別:女性
同居人:あり
職業:飲食店経営
日時:二〇二〇年六月二日
同情される人がいれば、そうでない人もいる。当たり前のこと。医療従事者のほうが私たちの何倍も苦労していることも当然分かっている。
この前代未聞のコロナ禍で必要な人から順番に救っていくとする。私たちはかなり後ろの方みたいだ。
そもそも最初の人たちも未だに救えていない。常に専門家は医療崩壊の危機を叫んでいる。現在進行形で先頭の人たちの優先順位はコロコロと変わり続けている。私たちのことを考えてくれるのはまだまだ先になりそうだ。
もう仕方のないことなんだ。旦那が亡くなったのは、必要な犠牲だった。私たちを見捨ててでも救わなければいけない人たちがいる。それだけのこと。
そんなことを思うと悲しむ気にもなれなかった。
感染防止のために遺体はすぐに隔離された。最後に顔を見ることも出来ずに、私は旦那を見送った。
通夜と葬式も簡易的に行った。友人や常連客など、参列を希望する人はいっぱいいたが、この状況で大人数が集まることは不可能だった。近い親族のみを集めて、最低限の儀式だけをする。「パパっと」終わらせた。そんな言葉が一番近かった。
そして私の旦那が亡くなった出来事は世間では何一つ取り上げられなかった。不思議なくらい報道されなかった。
少しくらいニュースになれば、飲食店の現状を知ってもらう機会になったかもしれない。それで全国の同業者への支援の声があがれば、多少は私の気持ちも救われたと思う。
それが全く無かった。わたしは普段あまり見ないネットも見たが「船田一徹」のニュースは一つも無かった。テレビも取り上げていない。
そうか。やっぱり見捨てられてるんだ。
船田屋でクラスターが発生した直後は、店の電話もクレームが殺到していた。あのクレームをいれていた人たちも、今はまた別の人にクレームをいれているのだろう。
そうやって「怒り」の声も届かなくなり、私たちは忘れ去られていくんだ。
あなたへ
守ってあげられなくてごめんなさい。最後は痛い思いをしたことでしょう。大丈夫ですか?
私はあなたの分を一生懸命生きます。
お店はもう続けられないと思います。私一人でお店を続けられるとは思えません。
パートか何かで仕事をしながら、息子を大学まで行かせます。
あなたのことは忘れません。あなたがいたから、私はここまで楽しく生きることができました。
また一緒に料理作りましょうね。
自分の気持ちに整理をするために、そんな手紙を書く。ここで私までくじけてはいけない。コロナだろうがなんだろうが、私は私で生きていかなきゃいけない。それに息子という守らないといけない人もいる。
それを確かめるのに一か月かかった。絶望で何も出来なかったけれど、少しずつ元気も出てきた気がする。
この一か月は喜怒哀楽の感情が湧かなかった。それがじわじわと旦那がいなくなった悲しみを実感するようになった。
テレビを見て少し怒る気持ちも出てきた。テレビは不倫した芸能人のニュースをやっている。日本の片隅で自殺した人のことは一切触れない。
何をどうあがいても、旦那の自殺に世間は気づいてくれない。それはもう諦めないといけないみたいだ。
だって船田一徹が死んでも、世間は何も困らないんだから。
つづく
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進行形で連載するの向いてないですわ!!!
ごめんなさい、ちゃんと更新します
もうちょっとだけ書き続けてみようと思います
まだ書いてる途中で、この先どんな展開になるかわかりません
書いてはすぐに公開してを繰り返すと思います
それでも良ければ、読んでください
目標は毎日更新
頻度はあまり期待しないでほしい
ただおもろいことをしたいだけです
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