「むかブロ?」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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景子
「景子さん。昨日何か不審な人物を見たりしていないかい?」
寝ていないこともあって思考が停止していたが、ひとつだけ「ピン」と思い当たることがあった。
あの車だ。光輔と山に登ったときに見たあの車。
私は車の話を益川さんにした。ずっと緊張状態で口もカラカラだったから、話すのに苦労した。しどろもどろになりながらも、私はナンバープレートのことも伝える。
「どうしてそこまで覚えてるんだい?」
「誕生日だったんです、私の。それで光輔と……光輔くんと話題になったんです」
益川さんは手元の手帳にペンを走らせる。かなり有益な情報ではないだろうか。もしこれが「誘拐」だとしたら、犯人が犯行に使った車の可能性だってある。
「他には何か怪しい人やものは見ていないかい?」
昨日の自分を必死に思い出す。一人だけ気になる人を思い出した。
タッチだ。
昨日会ったとき、タッチは何か変な様子だった。タッチは前にお姉ちゃんの担任だったこともある。ひょっとすると何か関係があるのかもしれない。
タッチに余計な容疑がかけられるのは辛かったし、そもそもタッチが悪いことをするような人ではないことも分かっている。
でも、私はタッチと会ったことやそのときの様子を益川さんに伝えた。
「ありがとう。またあとで学校にも行くよ」
益川さんはほんのちょっと顔を緩めて私に言ってくれた。少しだけホっとした。
村がどんどん明るくなる。日は完全に昇りいい天気の朝だ。本当だったら卒業式の最高の朝のはずだったのに。
どうなるんだろう、卒業式。言いたかったけど、言える空気ではなかった。お父さんもお母さんも目の焦点が定まっていない。
私の携帯電話が鳴る。光輔からの着信だった。私は電話に出る。
「もしもし」
「もしもし……大丈夫か、景子」
「……うん」
大丈夫ではなかったけど、そう答えるしかなかった。
「良かった。とりあえず声が聞けて安心した。とりあえず、俺に出来ることがあったらなんでも言ってほしい」
電話越しだけど光輔も混乱しているのが分かる。声だけでも相手の表情が想像出来るのは長年一緒にいたせいだ。光輔はそれでも私を安心させようとしてくれているのが分かる。
「ありがとう」
「うん。とりあえず、自分に出来ること、俺はするから」
「うん」
「じゃあ」
電話を切ると、お母さんも家の電話に出ていた。
しばらくして切ると、お母さんはゆっくりと言った。
「卒業式、無くなるかもって」
「え?」
「校長先生から。先生もどうしていいか分からないって。でも、今は家でゆっくりしてほしいって。状況を見ながらまた連絡しますって」
お姉ちゃん。お願いだから帰ってきて欲しい。今なら間に合う。
私はただただそれだけを願った。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月
中学卒業を間近に控えた三人は記念にタイムカプセルを埋めようと企画する……
【登場人物】
・福山光輔(ふくやま・こうすけ)
男性
百白中学校三年生
・佐々木景子(ささき・けいこ)
女性
百白中学校三年生
・泉心菜(いずみ・ここな)
女性
百白中学校三年生
・佐々木莉子(ささき・りこ)
景子の姉
・上杉史也(うえすぎ・ふみや)
男性
百白中学校の先生。通称「タッチ」
・益川正義(ますかわ・せいぎ)
男性
刑事
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