「むかブロ？」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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心菜
「渚さんでもダメか……」
「ちょっと待って。たぶん解けるから」
タッチの最後の暗号。暗号部最後の暗号。
これも結局、私の脳では解くのは限界だった。ふとした瞬間に思い出す。そのたびにじっくり考える。だけど、解けない。
「最後だからめちゃくちゃ難しくしといた」
タッチのニヤニヤ顔はなぜかすぐに思い出せる。腹が立つ。
そうか。この暗号、光輔に見せてないんだ。光輔ならパパっと解けるかな？それとも、卒業式に悔しい気持ち押し殺してタッチに答えを聞くことになっていたんだろうか。
今となっては、何もかも迷宮入りだった。
大事にとっていた暗号部の暗号。その全てを渚さんに見せた。渚さんは昔からなぞなぞや謎解きが好きらしい。たまにリアル脱出ゲームなんかも行くくらい。
だから一つの暗号を除いて、全てを自力で解いた。「これは倉庫だ」とか「体育館だ」って、答えをズバズバ当てた。
そして、唯一解けていないのが、最後の暗号だ。
「これが心菜ちゃんの先生が渡してきた最後の暗号なんでしょ？」
「うん」
「これは心菜ちゃんが好きな男の子には見せたの？」
「だから！好きじゃないって！」
渚さんはたまにこうしていじってくる。嫌がりながらも、正直中学時代を思い出す感じもした。
「名前くらい教えてよ～」
「…………」
言わなかった。
渚さんはしばらく会話ののちに黙り込んで暗号を見つめる。これだけが唯一解けていないのが、相当悔しいらしい。
私も長年考え続けた暗号が渚さんに解かれるのは悔しい気持ちも少しはあるが、そんなことより解き明かしてほしい気持ちのほうが大きかった。
早く私の心の中の「ニヤニヤしているタッチ」を黙らせてほしい。
景子や光輔は、タッチとは連絡取っているのかな？
今日も景子からＬＩＮＥが来ていたけど、つれない返事をしておいた。光輔にも未だ連絡はしていない。いつまでこれでいるつもりなんだろう。情けない。
「心菜ちゃんはさ。『ラブ＆メロディー』って知ってる？」
渚さんが唐突に聞く。
「知ってるよ」
「誰推しとかある？」
「うーん……えっ、何でそんなこと聞くの？」
「秘密」
渚さんはニコっと笑う。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白（ひゃくしろ）村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
事件の混乱で卒業式は中止が決定
心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと
それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
ニ〇一八年、舞台は東京へ
事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう
景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う
すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた
光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける
驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す
結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに
すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた
【登場人物】
・福山光輔（ふくやま・こうすけ）
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子（ささき・けいこ）
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜（いずみ・ここな）
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子（ささき・りこ）
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也（うえすぎ・ふみや）
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。
・益川正義（ますかわ・せいぎ）
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
・早見徹（はやみ・とおる）
男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
・片寄渚（かたよせ・なぎさ）
女性。心菜の味方をする。
・長谷川すみれ（はせがわ・すみれ）
女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。
・羽田部長（はねだ）
男性。光輔の上司。
・松尾（まつお）
男性。光輔の部下。
・林さん（はやし）
女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
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