「むかブロ？」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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心菜
光輔や景子といたとき、私は二人に甘えてばかりだった。一人っ子の私にとって二人は兄や姉のような存在だった。私は末っ子。
渚さんと一緒にいるとあの日を少し思い出す。だから、渚さんには少しだけ本当の自分を出せるのかもしれない。
「……私、ドーナツが食べたい」
「え？ドーナツ？」
じゃあいいや。私は私らしくいよう。馬鹿で、周りに甘えて、ワガママで。それでいい。それがいい。
「あと、太鼓の達人がしたい」
「ええ？」
「あと、カラオケも行きたい」
渚さんは分かりやすく慌てる。私がこんなにべらべらしゃべるとは思っていなかったんだろう。
「ちょっと待ってね。心菜ちゃん」
渚さんは胸元からメモ用紙とボールペンを取り出す。
「ドーナツとカラオケと……なんだっけ？」
「太鼓の達人」
渚さんはメモを取る。私が言ったことを全部書いてくれる。
「すたばってやつも行きたい」
「スタバ？ああ、スターバックス？」
「それ！」
あんな田舎の村にそんなおしゃれなものはなかった。
「あとは……ブランコに乗りたい」
「ブランコ……」
私の発言に一つも疑問を持たず、渚さんはスラスラとペンを走らせる。
「それで全部？」
「うん」
渚さんはメモを改めて見返す。
「……うーん、全部は無理かもしれないけれど、でも、頑張ってなんとかする」
「……ありがとう」
渚さんはそのメモを大事そうに胸ポケットにしまい、去っていった。
一気に言い過ぎたかな。たぶん、渚さんにはだいぶ迷惑をかけることになるだろう。
でも、少しずつ自分に明るさを取り戻していかないといけない。そのためにやりたいことはやっておかないと。
ごめんなさい、渚さん。
と心の中で呟いた瞬間、渚さんが大急ぎで戻ってきた。
「ど、どうしたの？渚さん」
「さっきの暗号「りかしつまど」だ！」
渚さんは私が質問する前に暗号の解説をする。
「やどかりは四匹だから四文字目の「り」。いかは二文字目の「か」。そうでしょ？合ってる？」
「うん」
渚さんは「スッキリした～」と言い残して、また去っていった。解き終わったあとの渚さんのドヤ顔もどこか光輔に似ていた。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白（ひゃくしろ）村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
事件の混乱で卒業式は中止が決定
心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと
それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
ニ〇一八年、舞台は東京へ
事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう
景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う
すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた
光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける
驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す
結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに
すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた
【登場人物】
・福山光輔（ふくやま・こうすけ）
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子（ささき・けいこ）
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜（いずみ・ここな）
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子（ささき・りこ）
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也（うえすぎ・ふみや）
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。
・益川正義（ますかわ・せいぎ）
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
・早見徹（はやみ・とおる）
男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
・片寄渚（かたよせ・なぎさ）
女性。心菜の味方をする。
・長谷川すみれ（はせがわ・すみれ）
女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。
・羽田部長（はねだ）
男性。光輔の上司。
・松尾（まつお）
男性。光輔の部下。
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