明日何しようかな?#42

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

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景子


年が明けて、最初の仕事だった。

私の目の前にはあの男がいる。早見だ。

「ネオンさん……タトゥー入れてるんですか?」

「違います」

「転職人を探せ」を執筆していて、納得がいかないことがたまにある。「あ、ここ聞いとけばよかった」とか「なんでこの人はこう答えたんだろう」とか。

そういう場合はだいたい電話かメールで済ませる。今までインタビューした人はみんな優しく、直接会わなくても律儀に回答をくれた。

今回の「早見徹」の記事を書いているときも、納得がいかないパターンが来た。ネットでは、早見は自ら豚を買ったり、ネギなどの野菜を広大な土地を購入し育てたりと異様なほどのこだわりがあるという噂がある。それが事実なのかどうか、尋ねるのを忘れていた。

なぜそんな大事なことを聞き忘れたのか、自分のポンコツさに呆れた。だけど、たぶんあまりにこの人と早く離れたいという気持ちが強すぎたんだと思う。

インタビューの内容は録音しており、それを聞き返したが、自分の声の覇気の無さに自分でも笑ってしまった。

あのときは自分の感情に任せ、あまりに素っ気ない態度を取ってしまった。素直にそれはプロとして反省した。

もう一度、ちゃんと会って話を聞こう。

そう思わせるには、もう一つ大きな理由もあった。むしろ、そっちの方が大事だったと言っても過言ではない。

「なるほど……友人が元カレの名前のタトゥーを入れていると」

「いや……友人と言っても、こないだ会ったばかりなんですけど……」

長谷川すみれ。あの子は一刻も早くまともな生活を送らないと手遅れになる。

「どうして、そんな初対面の子のことを思ってるんですか?」

早見の質問に口をつぐんでしまう。それは私も分からない。これはもうただの正義のヒーローなんだと思う。

「なんか、助けてあげたい気持ちが芽生えちゃったというか。いや、別に、今すぐ手術を受けたいとかそういうのじゃないんですよ。実際、タトゥーの除去となったらいくらくらいするのかなぁって」

すみれさんのあの腕のタトゥー。もしあれを除去出来る方法があるのならば……。あと単純にどのくらいの費用で早見が動くのか興味もあった。

早見はタトゥーの面積を聞いてきた。私はジェスチャーで答える。

「手首にこのくらいの大きさで。英語の筆記体で、ばーって彫られてるんです」

「うん……」

早見は指を顎に当て考え込む。計算をしているのだろうか。

「私が三年くらい前のバリバリの医者のときだったら……」

早見は指を二本立てる。

「……二十万?」

「あっ、いや、桁が一つ違います」

二万円……なわけがない。

「二百万ですか」

「でも!私の施術なら跡形もなく除去出来ますよ。きれいに消せます」

無理だな。いや分かっていた。そもそもあの子にお金なんてないんだし。最初から分かってはいたが愚問だった。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。

 

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