明日何しようかな?#41

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

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光輔


俺が悪い。勉強してこなかった俺が悪いんだ。

「三回目」

松尾がまた話しかけてくる。

「え?」

「今日ため息つくの三回目っすよ、先輩。大丈夫ですか?」

「ああ、ごめん」

お前も原因の一つだよとは言えない。でも、知らない間にため息をついていたみたいだ。しかも周りにバレている。

「先輩、最近元気ないっすよね?なんかありました?」

今日は二〇一九年一月十六日。

俺が電車から心菜を見つけて、その後アパートで莉子ちゃんを見てからもうすぐ一か月が経つ。

その間、俺は暇さえあれば、あのコンビニに行って張り込みをしていた。

理由はちゃんと莉子ちゃんであることを確認したいから。そして、もう一度心菜に会えるかもしれないから。

年末もお正月もずっと張り込んだ。たしかな証拠を掴んでから益川さんには連絡をしようと決めていた。

だけど、何も得られず、益川さんにも連絡出来ず、一か月が経過していた。

益川さんに連絡するべきか?もう少し張り込みを続けるべきか?

そんな悩みがずっと心の中で渦巻いていた。だから、誤字脱字も多くなったんだろう。

……まあ、もちろんそんなこと松尾には言えるわけないが。

「なんかクマも多いっすよ。ちゃんと野菜とか食べてます?」

「大丈夫。大丈夫だから」

俺は強めの口調で松尾の心配を振り切った。

そのあとは誤字を訂正して、羽田部長にOKをもらった。そのあとも細々と仕事をして、退社。

向かう先はもちろんあのコンビニ。自宅の最寄り駅からは二つ手前だが、俺は最近はそこで降りる。

コンビニでいつもの百円コーヒーを買って、椅子に座る。

妻に怪しまれないように十九時までここで粘って、そこから帰宅する。妻には残業とは言ってある。

まあ、そんな嘘をつかなくても、どうせ妻は家で寝ているか、家にいない。年始も相変わらず、何かに忙しいみたいで家に帰ったらすでに寝ていることがほとんどだ。

あのアパートのあの部屋には、あの日っきり一度も女性の姿は現れなかった。洗濯物は出てはいるが、基本日中は家にはいないようだ。たまたまあの日は昼間に家にいる日だったのかもしれない。

もう一度そんな日がこないかと粘っているのだが、俺はただイートインでコーヒーを飲んで帰るだけの人と化していた。

十八時四十五分。あと十五分もすれば、今日の張り込みは終わり。

そんなときにスマホが震える。「タッチ」からの着信だった。

出るかどうか、俺は少し迷ったが、どうせ十五分待ったところで特に収穫があるように思えなかった。急いで席を立ち、コンビニを出ることを選択した。

「はい」

「お、福山、元気か?」

コンビニから一歩出たところで、俺はタッチと通話をする。内容は他愛もない近況報告だ。

今、コンビニで張り込みしていたことを話そうか一瞬迷った。だけど、したところでメリットは無さそうなので辞めた。

「しばらく大阪に帰る予定は無さそうか?」

「はい」

俺はタッチとの通話を切る。こうしてかつての担任と連絡が取れるのはありがたい。だけど、決まって事件のことや心菜のことが思い浮かんで複雑な気持ちになる。

俺はもう一度だけアパートの真ん中の部屋を見る。電気が付いていないことを確認して、帰路についた。

「ただいま」

家に帰る。返事はない。部屋は暗い。

電気をつけると、テーブルの上には作り置きのごはんと置き手紙。


さきに寝ます ごめんなさい


またこれだ。

俺は妻にも聞こえるように大きくため息をついた。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。

 

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