「むかブロ？」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
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心菜
渚さんは暗号をじっと眺める。
暗号部の話をしたら、渚さんは思っていたよりも食いついてくれた。私と距離を縮めるためにわざと食いついてくれているのだろうか。でも、表情は真剣そのものだ。
「これは心菜ちゃん、一人で解いたの？」
「うん」
紙をじっと見つめる顔は誰かに似ている。
少し考えたあと、それが光輔なことに気が付いた。
「光輔の連絡先も送るから。ちゃんと東京いること言いなよ、自分で」
景子の言葉がいつまでも心の中で繰り返される。
あの電話の対応を聞くと、たぶん光輔も東京にいるんだろう。
光輔と景子がすぐそこに会える距離にいる。だけど、私は景子のＬＩＮＥをかわし続けてきた。心の準備が出来ていないからだ。
「暗号部は心菜ちゃん一人だったの？」
「いや、一緒にタイムカプセルを埋めた男の子もいた」
「その子どんな子なの？」
「…………」
私はなんとなく口をつむぐ。
「なるほどね」
渚さんは何かを分かったような表情になる。
「え？暗号分かったの？」
「ううん。違う。でも、心菜ちゃんがその男の子のことが好きなことは分かった」
私は驚く。
「なんで？」
「ほら図星だ」
渚さんはいつもの優しい笑顔になる。
「心菜ちゃん、分かりやすいよ。顔に出やすいというかさ」
「……昔、おんなじこと言われたことある」
「そっか、だからあんまり話したくなかったんだね」
それもあるかもしれないけど、でも、本当は事件のことを言いたくないからとは言えなかった。
「会ってみなよ。絶対会わなかったら後悔するよ」
「え？」
「電話してた女の子も。その好きな男の子も。ちゃんと会わないと」
分かっている。だけど……怖い。
「また今度の日曜日、出かけよっか」
「え、でも」
「大丈夫。私がなんとかするから」
渚さんはここのところずっと私といてくれる。私の味方でいてくれる。きっと、私にもっと心を開いてほしいんだろう。
私はずっと申し訳ない気持ちだった。私のわがままにずっと付き合ってもらっているような気がして。
だけど渚さんは口にはしないけど「私を信じて」と言ってくれているような気がした。もっと頼って欲しい。もっと私に心を開いてほしいと。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白（ひゃくしろ）村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
事件の混乱で卒業式は中止が決定
心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと
それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
ニ〇一八年、舞台は東京へ
事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう
景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う
すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた
光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける
驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す
結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに
すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた
【登場人物】
・福山光輔（ふくやま・こうすけ）
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子（ささき・けいこ）
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜（いずみ・ここな）
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子（ささき・りこ）
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也（うえすぎ・ふみや）
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。
・益川正義（ますかわ・せいぎ）
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
・早見徹（はやみ・とおる）
男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
・片寄渚（かたよせ・なぎさ）
女性。心菜の味方をする。
・長谷川すみれ（はせがわ・すみれ）
女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。
・羽田部長（はねだ）
男性。光輔の上司。
・松尾（まつお）
男性。光輔の部下。
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