「むかブロ？」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
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心菜
「ふーん、タイムカプセルか……」
私は所々嘘をつきながら自分の中学時代の話をした。事件の話はしたくなかったし、光輔や景子の名前も出していない。
でも、中学の同級生二人とタイムカプセルを埋めた話はした。
「それ、掘り返さなくていいの？」
それは私も思っていた。あのタイムカプセルどうするんだろうって。
いつまでもいつまでも、あの日の出来事から目を背けちゃダメだ。きちんと全てを終わらせなければいけない。それは分かっている。
だけど、今更あの二人に会って何を話せばいいのだろうか……。
「ちゃんと言ってみたら？タイムカプセルを掘り返したいって」
「…………」
方法は一つだけある。実家から持ってきた小さな頃に使っていた自由帳。そこに景子の実家の電話番号が書いてある。それが繋がれば、景子のお母さんと連絡が取れる。そして、景子の連絡先も手に入れることが出来るだろう。
本当なら掘り返すのは再来年。それを早めてもらうことになる。私の都合で。そんな話聞いてくれるだろうか。
「心菜ちゃん」
渚さんが私に優しく話しかける。
「全部正直に言ったほうがいいんじゃないかな？そしたら……」
「イヤだ！」
私は大きな声を出してしまう。渚さんも口をつぐむ。
「ごめん」
「私のほうこそおっきな声出してごめんなさい。でも、イヤなの」
渚さんはうなずく。
「……でも、連絡は取ってみようと思う」
「そっか」
しばらくしたあと、私は景子と連絡を取ることを決心した。渚さんはいないところで。
スマホの電話帳を見る。自分の家族以外誰も載っていない。当たり前だ。誰とも交換していないんだもん。
ダイヤルの画面に移動する。自由帳を見ながら番号を一つ一つ押す。そして、発信ボタンを押す。
スマホに耳を当てると「プルルルルル」と音が鳴っている。どうやら、まだこの電話番号は使われているらしい。
「はい、佐々木です」
出た。繋がった。
「あの……」
声が出ない。緊張する。なんて言えばいいか、あんなに練習したのに、うまく話せない。
「……どなたですか？」
スマホから怪訝な声がする。まずい、怪しい人だと思われている。
「泉です。泉心菜です」
しばらく沈黙が続く。
「心菜ちゃん？本当に心菜ちゃんなの？」
「はい」
「まあ！久しぶりねえ！元気？」
がらっと声色が変わる。あの日のままの景子のお母さんの声だ。
何年も話していなかったのに、景子のお母さんはすんなりと私の話を聞きいれてくれた。
そのあと、景子の連絡先を教えてもらった。景子のお母さんとＬＩＮＥが繋がり、そこから景子のＬＩＮＥも手に入れた。
「またいつでも電話してちょうだいね」
「はい、ありがとうございます」
電話を切る。嘘をついたりもしたが、とにかく景子と連絡を取る一歩手前まで来れた。
私はその勢いのまま、ＬＩＮＥ通話をかける。今なら、話せるはず。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白（ひゃくしろ）村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
光輔らが不審な車を目撃していたことなど手がかりはあるものの、結局莉子は見つからず
事件の混乱で卒業式は中止が決定
タイムカプセルを埋めたときを最後に光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
【登場人物】
・福山光輔（ふくやま・こうすけ）
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子（ささき・けいこ）
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜（いずみ・ここな）
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子（ささき・りこ）
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也（うえすぎ・ふみや）
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」
・益川正義（ますかわ・せいぎ）
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
・早見徹（はやみ・とおる）
男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
・片寄渚（かたよせ・なぎさ）
女性。心菜の味方をする。
・長谷川すみれ（はせがわ・すみれ）
女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている
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