明日何しようかな?#51

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一章・第二章まとめ読みはこちら

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心菜


最近はテレビをよく見るから、自然とラブ&メロディーの情報は耳に入ってくる。歌番組もよく出ているし、朝の情報番組なんかにもインタビューを受けているのをよく見る。

最初は知る人ぞ知るマニアックなアイドルだったのに、いつの間にか国民的アイドルにまで成長していた。CDは飛ぶように売れているし、音楽番組にも引っ張りだこ。正直こんなに人気になるとは思っていなかった。

私は可愛い女の子は好きだ。見ているだけで癒しになる。高校生で引きこもり生活を送っていたときも、時々アイドルのPVをYouTubeで見ていた。メジャーなアイドルよりも地下に潜っているほうが好みだった。

ラブ&メロディーも可愛い子が多いのでまだ売れていないときから名前は知っていた。今ではテレビでよく見るけれど、ラブメロは不思議と売れても応援し続けたくなる。

「アカリちゃんかな……」

「推しメン?」

「そう」

二推しはクルミちゃん。三推しはソヨンちゃん。

「渚さんは誰か推してるの?」

「私はクルミちゃんかな」

「分かる!クルミちゃんも可愛いよね!」

でも、意外だ。渚さんはあんまりそういうのに興味が無さそうなイメージがある。

「私ね、これでも地下アイドルの追っかけしてたことあるの」

渚さんはアイドルの話をし始めた。私もそれなりに詳しい自信はあったが、渚さんの知識量は段違いだった。聞いたことないアイドルが次から次へと出てくる。

「あっ、ごめん。話し過ぎちゃった」

「ううん、全然。なんかこんなに楽しそうに話してる渚さん初めて見たかも」

自分で言って気づく。私は渚さんに自分のことを話してばかりで、渚さんのことはあんまり知らなかった。私が勝手に壁を作っていたのもあるけど。

「周りにさ、アイドルの話が通じる人があんまりいなくて、つい……」

渚さんは恥ずかしそうにうつむく。

「もっと聞きたい。アイドルの話」

「え?」

「もっと知りたい渚さんのこと」

「心菜ちゃん……」

渚さんのこと、もっとちゃんと知ろう。そして、自分のこともちゃんと話そう。

ブーーーーっとスマホが震える音がする。渚さんのだ。

渚さんは「はい、はい」と返事をしたあと切った。

「ごめん、心菜ちゃん。私ちょっと行かなきゃいけないみたい」

「そっか」

「今度の日曜日。出かけるときにいっぱいお話ししよ」

「うん!」

渚さんはもう一度、さっきの暗号を見る。

「これ写メ撮っていい?」

「いいよ」

渚さんはタッチの最後の暗号をスマホに収めた。

「絶対に私が一番に解く」

渚さんはそう言って、私に暗号の紙を返す。

そう言われると、私も負けていられないと火がつく。

久しぶりだ、この感じ。タッチと光輔と競い合っていた、あの日みたいな気持ちを思い出す。

渚さんは私をあの日の自分に少しずつ変えていってくれているのかな?

渚さんの後ろ姿を見て、そんなことをぼんやり思った。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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