明日何しようかな?#52

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

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光輔


シンガポールですか……」

「そうだ」

羽田部長に呼び出された。しかも、面談室に。てっきりまた怒られるのかと思った。もしくはリストラでも言い渡されるか。とにかくいい予感はしなかった。

持ちかけられたのはシンガポールへの転勤だった。シンガポール支社のリーダーが三月で定年を迎えるらしい。その引継ぎを俺に任せたいという話だった。

これはいい話だ。今の平社員から確実に昇進するわけだし、給料も格段にアップするだろう。巡っても無いチャンスが巡ってきたというわけだ。

ただ……勤務地がシンガポール。俺は英語は出来ない。そもそも家族はどうする?不安や悩みは無限に湧いてくる。

「でも、どうして私なんでしょうか」

「今の社員全員を見渡しても福山くんが一番仕事が出来る。少しおっちょこちょいで私もいつも叱ってはいるが、それでも仕事にかける情熱は君が一番感じる。君になら任せられそうだと私が社長に推薦したんだよ」

羽田部長にこういう風に言われるのは初めてだった。まさかこんな風に思ってくれているとは思わなかった。

「さっきも言ったが、これは命令ではない。無理なら断ってもかまわない」

「…………」

「他の支社のやつが抜擢されていたんだが、そいつが急に辞退したらしくってね。だからこんな急な話になってしまったんだ。それは本当にすまないと思っている」

「いえ」

「だから無理強いはしない。こんなこと言うと余計に無理を言っているみたいだが、本当にそんなつもりはないんだ」

……まあ、今この状況は断れる雰囲気はゼロだ。無理強いされている気しかしない。

「今は返事はまだいい。二月中には返事が欲しい。他の支社でも色んな人に当たっているらしいから、もし他で話がついたら、この話は無かったことにしてくれ」

「分かりました」

「君からは何か質問はあるかい?」

「行くとしたら、いつからシンガポールへ行くことになるんでしょう」

「うーん、出来るだけ早いほうがいい。三月中には行ってもらうことにはなるかな」

「分かりました」

俺は羽田部長に一礼する。

「失礼します」

「あ、来週のプレゼンもよろしく頼むよ」

「はい」

ゆっくりと面談室のドアを閉めた。

大変なことになった。これはたぶん絶好のチャンスだ。チャンスなんだ。もし、この話を受ければ大きな出世となる。自分の人生が何ランクもアップする。

だけど、怖い。本当にそれでいいのか?シンガポールへ行くのが正解か?

今はまだ分からなかった。ただただどうすればいいか分からなかった。

「先輩、顔真っ青っすよ」

松尾だ。帰ってきた途端に話しかけてくる。先輩の顔色を伺うスピードは本当にずば抜けている。

「いや、ちょっと、色々あってね」

「そうっすか……」

特に何も言ってないが松尾は根掘り葉掘り聞いてこない。察したんだろう、何かを。

「……来週のプレゼン頑張りましょうね」

来週、自社の製品を購入したいとの商談が持ちかけられていた。そこで、自社製品をプレゼンする役に俺と松尾は抜擢された。今思えば、これも羽田部長からの期待の表れだったんだろう。

問題はこいつと組まされたことだ。分からないけど、たぶんこいつは大した仕事はしない。俺が引っ張ってくれと暗黙のうちに頼まれているような気がしてならなかった。

「ああ、頑張ろうな」

頑張ろうな、か。頑張るのは俺なんだけどな。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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