明日何しようかな?#47

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一章・第二章まとめ読みはこちら

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光輔


「もしもし、グッバイぐっちーでございます」

女性だ。女性の優しい声がする。

「あ……もしもし」

フクヤマさんの電話で間違いないでしょうか」

会員登録のときに名前は送ってある。偽名やニックネームでもいいらしいが、面倒くさかったので本名にした。

「はい、そうです」

「私、ぐっばいグッチー聞き手役のナオコです」

「ああ、どうも」

「どのような不満でもかまいません。フクヤマさんのペースでお話しください」

きっとテンプレートがあるんだろう。だけど、あまりそれを感じさせない優しい口調で話しかけてくれる。電話口でもいい人なのが分かるみたいだ。

「……あの、これ初めてなんですよ」

「そうでしたか!」

「これって、もう愚痴っていい感じのやつですか?」

「はい!なんでもどうぞ」

相手は完全に聞き手モードに入っている。あとは俺が愚痴を言うだけだ。今、心の中にあるストレスを全て吐き出せばいい。

「……会社が最近イヤなんです」

はじめの第一歩は少し勇気がいった。だけど、一歩目を踏み出すと、そのあとはスラスラと愚痴が出てきた。お酒のおかげもあったと思う。

ナオコさんは俺の愚痴を「うん、うん」と柔らかく受け止めてくれた。しどろもどろな俺の話でもちゃんと聞いてくれた。

「でね!後輩の松尾ってやつがいるんですけど」

「はい」

「そいつね、こないだ、LINEでなんかゲームの招待状みたいなの送ってきたんですよ」

「はい」

「あとから知ったんだけど、その招待状みたいなの送れば、ゲームのボーナスがもらえるらしくってさ」

「ありますね」

「そんなのさ、普通先輩に送らなくない?チェーンメール回してるみたいなもんじゃん」

「フフフ」

あくまでお悩み相談ではない。これは愚痴を聞くだけ。だから、アドバイスをしてくれたり、過度な肯定や否定をしたりもしない。ただただ聞き手に回ってくれる。

でも、それが自分にとって気持ち良かった。顔も見えない、どこの誰かも分からない相手だからこそ話しやすいのかもしれない。

「でさ、妻も最近忙しいみたいで全然相手してくれなくて」

「ご結婚されてるんですね」

「あ、はい」

こんな話も会社では出来ない。小さな頃はこんな愚痴は会社の人と酒を飲みながらウダウダするものだと思っていた。だけど、あいにく今の会社にはそんな話をしたくなるようなやつはいない。

「なんかもうさ、ずっと一人なんだよね」

「辛いですね」

気づいたら三十分も話していた。

「……これって、どうやって終わるんですか?」

「あ、お好きなタイミングで切ってもらって大丈夫ですよ」

「ふーん。いや、思ったよりスッキリした」

お世辞ではなかった。本当にこんなにも自分の口からたくさん愚痴を吐けるとは思っていなかった。

「嬉しいです」

「これって、また利用したら相手って変わっちゃうんですか?」

「そうですね。でも、指名も可能です。私だいたい暇なので、この時間帯なら指名出来ると思います」

他の人もいい人はいるんだと思う。でも、なんとなくナオコさんが自分には一番合っているような気がした。

「そうなんだ。分かりました。ありがとうございました」

「いえいえ」

「では」

俺は電話を切る。自然と二本目のビールに手が伸びた。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。

 

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