明日何しようかな?#48

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

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景子


「『グッバイぐっちー』代表の林と申します」

林さんはすみれさんに名刺を渡す。

「どうも……」

私は再びあのアトリエを訪れていた。一人の助っ人を連れて。

「その『グッバイぐっちー』というのはなんなのでしょうか?」

すみれさんは訝しげに聞く。

私が林さんと出会ったのは「転職人を探せ!」でインタビューをしたときだった。

この林さんも元々は保育士さんをしていた。だけど、あまりの重労働に日々辞めたいと悩んでいた。そんなとき、同僚と仕事の愚痴をこぼしあっていたら、ふとひらめいたそうだ。

「誰にも言えないような愚痴を聞くだけの仕事があってもいいんじゃないか」

貯金を全部はたき会社を設立。『グッバイぐっちー』のサービスを開始した。周囲には「そんなもの需要あるの?」と散々馬鹿にされていたらしいが、それを覆すかのように『グッバイぐっちー』は注目を浴びた。

口コミ、SNSなどでその存在が知れ渡ると瞬く間に、日本中から「愚痴」が舞い込んできたらしい。林さんもはじめは聞き手役として、愚痴を聞いていた。サービスが軌道に乗ってからは従業員や聞き手役の人を雇い、会社をグングン成長させた。

最近は林さん自らもメディアに出演するようになり、そこに私も食いついたというわけだ。

こうしてメディアに出演するたびに『グッバイぐっちー』は注目を浴び、また利用者が増える。そして、林さんにメディアは食いつき……と林さんの快進撃はとどまることを知らない。今度、「がっちりマンデー」にも出るそうだ。

そんな「転職人」である林さんとは、インタビューのときから意気投合し、プライベートでも会うほどの仲になった。年齢は私の一つ上。だけど、腰の低く謙虚な林さんは一緒にいて落ち着く存在だった。成功者として羨ましい、悔しい気持ちがあるのも本音だが、ともに働く女性として憧れの存在であるのは間違いなかった。

そんな彼女が酔うといつも言うのが「聞き手役が足りない」だった。なんでも『グッバイぐっちー』の利用者が急増したため、聞き手役が足りていないとのこと。「周りでいい人いたら紹介して~」と半分冗談で頼まれていた。

私は友達が少ない。だから紹介できる人なんていなかった。

だけど、今は違う。ちょうど適役が目の前にいる。

私がすみれさんを林さんに紹介しようと電話をしたら「今すぐにでも会いたい」と返してきた。

「すみれさんに直接会いにいくんですか?」

「だって、その子そのアトリエにずっといるんでしょ?会いにいけるじゃない」

「…………」

「分かってる。そんな簡単に食いついていいの?って言いたいんでしょ?大丈夫。景子ちゃんが紹介する人ならたぶん大丈夫って思ってるから」

林さんには本名を教えている。社会人になってそんな人はほとんどいない。基本は「ネオン」で活動している。

そんなこんなでトントン拍子ですみれさんを『グッバイぐっちー』の聞き手役として働かせよう計画は進み(すみれさんの知らないところで)、今日はこうしてすみれさんのアトリエで三者面談をしていた。

「働く場所はどこでもいいの。あなたのスマートフォンがあれば、お客様の愚痴を聞く準備は完了」

「アトリエにいたままでもいいんですか?」

「ええ、もちろん。絵を描いてる片手間で大丈夫。依頼が来たら、専用の電話番号にかけてお客様の愚痴を聞くだけ。どうかな?」

すみれさんは分かりやすく戸惑っていた。さすがに急すぎたかな。少し反省する。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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