クラスター#1

氏名:黒木匠(くろき・たくみ)
年代:三十代
性別:男性
同居人:あり
職業:お笑い芸人
日時:二〇二〇年四月二十日


「二人ともごめんね。本当はもっといいお店に連れてってあげたかったんだけど。ほら、今どこも開いてないからさ」

「全然大丈夫です」

まだお酒も入ってないのに、目の前の女子二人はなんだか酔っぱらっているみたいだ。理由は簡単。僕の隣にあの表選手がいるからだ。

目の前に座っているのはモデルの原田久実。「くーみん」の愛称で親しまれている現役モデル。有名ファッション誌「シナモン」の専属モデルとして、ティーンから絶大な人気を得ている。

最近はバラエティ番組にもちょくちょく出るようになった。

「うち、めっちゃお笑い好きなんですよ~」

たまたまロケで共演したときに、休憩時間に話しかけてきた。

「黒木さんのインスタとかもフォローしてます」

くーみんはインスタの画面を見せてくる。たしかに僕のアカウントをフォローしているみたいだった。

そのときは他愛もない世間話で終わったと思う。それから数日経っただろうか。くーみんからインスタのDMが届いた。

「黒木さん!先日はありがとうございました!また今度ご飯連れてってください」

若いのに礼儀正しい子だなと思った。もうインスタでそういう挨拶をする時代が来てるのかと驚きもした。

くーみんはそれからも定期的にDMを送ってきた。

「こないだのネタ番組、超おもしろかったです!」

「黒木さんのラジオ、たまたまタクシーで聞きました!」

うーん。いや、嬉しいかと言われれば嬉しい。こんな若い子とやり取りをする機会なんて滅多に無い。だけど、八方美人とでも言うのだろうか。色々な人に媚を売るタイプの子なんじゃないかなって内心思っていた。

「え?くーみんと仲良いんすか?」

「いや、仲良いっていうか……」

また別のバラエティ番組。スポーツ選手とトークする、みたいなよくある番組だ。この仕事をしていると、アスリートと話す機会なんてのは滅多に無い。たまたま前室で一緒になったのが表選手。

表選手は東京ゴジラーズに所属する現役プロ野球選手。ポジションはピッチャー。去年は先発で九勝七敗だった。今年は十勝をファンに期待されている、未来を担う若手選手の一人だ。

「俺、マジでくーみんめっちゃ好きなんすよ」

「そうなんだ……」

「なんか飯とか行けないっすかね」

僕はこういうときに「いい顔」をしてしまうクセがある。くーみんをご飯に誘うことは不可能では無い。表選手の要望に答えることが出来なくもない。そんなとき、ちょっとカッコつけたくなって「いいですよ」と口走ってしまう。

「いいですよ」

やってしまった。口走ってしまった。

そこからは話はとんとん拍子に進んだ。

「東京ゴジラ―ズの表選手って知ってる?」

最初はそんな言葉からだったと思う。自分からくーみんにDMを送るのはこれが初めてだった。返事はすぐに返ってきた。僕はご飯の話を進める。

「是非!表選手にも会いたいですし、黒木さんにももちろん会いたいです!」

ちゃんと僕にも礼儀を欠かさない点はさすがだ。

「あ、でもこれってぶっちゃけ合コンですよね?」

うん。まあ、そうだ。言いにくかったけど、合コンは合コン。

「うん、そうかも」

「じゃあ私も一人女子誘いますね!」

話が早い子だ。次の日にはDMが来た。

「小野寺ももちゃんって知ってますか?」

小野寺もも。知ってる。思っていたよりビッグネームが来て「ええ?」と声に出してしまった。

ネクストブレイク。次くる女優。「小野寺もも」で検索するとそんな文字が飛び交う。今、じわじわと人気が出ている女優さん。朝ドラに出演したり、アニメ映画の声優を務めたり、出演歴はなかなかのものである。

くーみんは小野寺ももを誘った。僕は快諾した。表選手にも聞いたが、もちろん快諾だった。僕と表選手にとって小野寺ももとは今回が初対面、それも大きな楽しみの一つになった。

こうして、僕、表選手、くーみん、小野寺もも。この四人での合コンが決まった。

だがしかし、一つ大きな問題が出来てしまった。日本政府が緊急事態宣言を出した。


つづく


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もうちょっとだけ書き続けてみようと思います

まだ書いてる途中で、この先どんな展開になるかわかりません

書いてはすぐに公開してを繰り返すと思います

それでも良ければ、読んでください

目標は毎日更新

頻度はあまり期待しないでほしい

ただおもろいことをしたいだけです


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