明日何しようかな?#65

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~三章(#1~#58)のまとめ読みはこちら

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光輔


「クソっ」

俺はテーブルを拳で叩く。

あの部屋にいた女性が莉子ちゃんだったら、事件は解決へ大きく進んだのかもしれないのに。全てが白紙に戻った。

益川さんは「諦めない」と言ってくれた。だけど、昔のような心強い覇気はなかった。俺には白旗をあげているようにも見えた。

実際、自分もそう思っている。

もう無理だ。莉子ちゃんの事件はもう何も手がかりが無くなってしまった。

毎日毎日、あのコンビニで見張っていたのも全部無駄だった。ずっと心にいたモヤモヤも消えるどころか、余計にモヤモヤを増した。

悔しい。

もしも莉子ちゃんを誘拐したような悪いやつがいるのなら、何としてでも見つけたい。そして、殴ってやりたい。もし、莉子ちゃんが自分から消えたのなら、だったら莉子ちゃんを許さない。

ただただ腹が立つ。やり場のない怒りが喉まで立ち込める。

それを俺は無理矢理ウイスキーで流し込んだ。ウイスキーなんてあんまり好きじゃないのに、自然とコンビニで手が伸びていた。コンビニにあった一番強い酒だったからだ。

食欲は湧かない。あの家に突入する緊張から昼から何も食べられなかった。空っぽの胃に強い酒を流し込む。そして、気持ち悪くなって、トイレで吐く。自分でも訳の分からないことを繰り返していた。

「温めて食べてください」

目の前のご飯は食べる気がしなかった。今日も妻は奥の部屋で寝ていた。

こんなとき慰めあうのが夫婦なんじゃないのか?なんにも言えない自分が悪いのか?そんなくだらないことまで考えてしまう。

落ち着こう。俺はテーブルに頭を伏せる。頭を冷やそうとした。

「はあ……」

少し落ち着いては来たが、悔しさと怒りはおさまらなった。

今夜は眠れそうにない。

冷静になると、あることがよぎる。

心菜だ。おそらくあいつはあの日東京にいた。なぜだ?連絡を取ろうにも、連絡先は分からない。

そうだ、こないだ景子に電話しようと思ってやめたんだった。

俺はスマホで景子に電話をかける。

しばらくスマホは震えたが景子は出なかった。まあ、折り返しがいつかかかってくるだろう。

スマホを触ってしまったついでに、またあのサービスを申し込んでしまう。

「グッバイぐっちー」だ。なぜかハマってしまい、やめられなくなっていた。

一度、ナオコさん以外の人にも愚痴を聞いてもらったが、やっぱりしっくりこなかった。逆にナオコさんを指名すると、自分の愚痴を優しく包み込んでくれる感じがあった。

それに彼女は前に俺が言ったことを全て覚えている。ちょっとしたことも全部だ。ナオコさんの記憶力には驚くばかりだった。

ブーーーーとスマホが震える。さっき申し込んだ「グッバイぐっちー」がかかってきた。

「ナオコしゃん!」

どうしようもない酔っ払いが電話開始と同時に叫ぶ。

「ど、どうされました、フクヤマさん……」

当然ナオコさんは戸惑っているが、俺は話し続ける。

「最悪なことがあったの!」


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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