「むかブロ?」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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心菜
一時期、毎日のようにニュースで取り上げられたせいで「百白村」といえば莉子ちゃんの失踪事件というイメージがついてしまった。
あの事件のことは誰にも言いたくないし、思い出したくもない。
私の口から事件について話すことは絶対になかった。
でも、この人なら話してもいいかもという人がやっと出来た。
渚さん。片寄渚。最近はずっとこの人といる。
最初、私はこの人のことを警戒していた。この人のことというより、私に関わる全ての人を警戒していた。ちょっとした人間不信になっていたと思う。
中学生の頃はそんなことはなかった。むしろ、人見知りもせずガンガン近所の友達にも話しかけていくタイプだった。
あの日を境に私は変わってしまった。
人と話すのを避け、ずっと一人で生きてきた。
高校にもほとんど友達はいない。一人で学校に行って、一人でご飯を食べて、一人で帰る。そんな毎日。
地元に帰れば近所の人たちが「おかえり」と言ってくれる。でも、それも無視するようになった。なんでかは分からない。次第に誰も私に「おかえり」と言ってくれなくなった。
家族とも最低限の話しかしなくなった。たまに光輔のこととか景子の話をしてくれた。だけど、聞こうともせず無視し続けた。
なんでだろう。なんでそんなことするんだろう。私にも分からない。
また誰かと仲良くなって、心を開いて、信頼しても、裏切られちゃうんじゃないかって。そんな不安があの日以来ずっとある。
別に光輔も景子も裏切ったわけではない。全くない。
でも、神様に引き裂かれたかのようにお別れするなんて信じられなかった。あんなに仲が良かったのに。
先月、私も村を出た。家族とともに東京に行かなくてはならなくなった。
初めて来た東京。人も空気も町も冷たい。私はこの町が嫌いだ。
なんにもせず、なんにも考えず、ただただどうしようもない日々を送っていた。
どうすればいいか分からない私に話しかけてくれたのが渚さんだった。
「困ってるでしょ?」
「…………」
「やっぱり。なんでも言ってくれていいんだよ」
これが最初の会話。いや、会話になってないか。渚さんは私のことを心配して話しかけてくれたらしい。
この日からしばらく経ったある日、渚さんはまた話しかけてくれた。
「私ね、心菜ちゃんみたいにどうすればいいかわかんない人、いっぱい見たことあるの」
私は目は合わせるが会話はしない。
「私は片寄渚。『渚ちゃん』とか『渚さん』ってみんなからは呼ばれてる」
「…………」
「やりたいこととかない?出来ることなら私が一緒にしてあげる」
直感だけどこの人は良い人なんだと思う。この人なら、話してみてもいいかもしれない。でも、もう何年も開いていない私の心はなかなか開かなかった。
結局、この日も無視し続けた。
次の日も渚さんは来た。
「やりたいこと見つかった?」
無視。
次の日も来た。
「出来ることならなんでもするよ?」
無視。
次の日も、また次の日も、渚さんは毎日欠かさず私に話しかけてくれた。
「こんにちは」
「……こんにちは」
私は小さな声で返す。渚さんは目を大きく開ける。
「返してくれた!ありがとう!」
「…………」
「どう?何かやりたいこととかあるかな?」
「別に……」
「そっか。何かあったらいつでも言ってね?」
渚さんは私の手を優しく握る。
「私に出来ることがあったらなんでもするから」
その言葉は心強かった。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
光輔らが不審な車を目撃していたことなど手がかりはあるものの、結局莉子は見つからず
事件の混乱で卒業式は中止が決定
タイムカプセルを埋めたときを最後に光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
【登場人物】
・福山光輔(ふくやま・こうすけ)
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子(ささき・けいこ)
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜(いずみ・ここな)
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子(ささき・りこ)
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也(うえすぎ・ふみや)
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」
・益川正義(ますかわ・せいぎ)
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
・早見徹(はやみ・とおる)
男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
・片寄渚(かたよせ・なぎさ)
女性。心菜の味方をする。
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ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです
#明日何しようかな もつけてもらえると大変喜びます
このブログへのリンクが貼ってあるツイートを引用リツイートしてもらえると感無量です
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