明日何しようかな?#26

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一章まとめ読みはこちら

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心菜


少しずつ、少しずつ私は渚さんに心を開いていった。

「……私、秋葉原に行きたい」

秋葉原?」

「うん」

「行こう!一緒に行こう」

嫌いな東京の町を出歩くことは全くなかった。特に行きたいところとかもないつもりだった。

友達のいない高校時代、唯一の趣味がアニメを見ること。深夜にずっとアニメを見て、ひとりで満足する生活。

聞いたことある。秋葉原はオタクの町だって。行ってみたら、好きなアニメのグッズとかがあるかもしれない。

十二月のとある日。町のみんなは忙しそうにしている。

約束通り、私と渚さんは秋葉原へ出かけた。

秋葉原に何があるのか、どこに行けばいいのか、そんなのは全く分からなかった。

行きの電車で渚さんはバッグから紙を取り出す。紙には手書きで細かい字で何か書いてある。

「アニメのグッズならだいたいこの店に行けば揃ってるよ」

渚さんが紙の上の文字を指さす。店の名前、ある場所、どういうグッズが揃っているか、どのくらいの値段のものが置いてあるか。そういった情報がびっしりと書かれていた。

「これ全部渚さんが調べたの?」

「うん。ネットとか友達に聞いたりして」

あとから聞いたのだが、渚さんはアニメや漫画は一切興味が無いそうだ。私のためだけにこれだけ調べてくれたらしい。

「あ?今『渚さん』って!」

「え?」

「初めて『渚さん』って呼んでくれた!」

恥ずかしかった。自然に口にしていた。私は恥ずかしいのを悟られないようにうつむく。

「ありがと」

そのあと、秋葉原では渚さんの下調べを頼りに色んな店を回った。

私の好きなアニメのグッズがあっちにもこっちにもあった。もう五年くらい前のアニメでもちゃんとグッズが揃っていてびっくりした。なんでもないフィギュアが何十万もしたり、コスプレをしている人がいたり、ずっと驚きっぱなしだった。

何よりめちゃくちゃ楽しかった。久しぶりにこんなに楽しかった。

「大丈夫、疲れてない?」

時折、渚さんが心配してくれる。疲れなんて全く感じなかった。

「大丈夫」

どうしても買いたかったグッズを少しだけ買った。

紙袋を持って帰りの電車に二人で乗る。

平日の夕方、車内は空いている。隣どうしで座った。

「ありがとう、渚さん」

「いいえ」

大丈夫だ。この人は私の味方だ。

「こんなとこ見られたら怒られるんだけどね」

「…………」

「悪いことするのってハラハラするね」

渚さんがやんちゃな顔をして言う。

何年ぶりだろうか、こんな幸せな気持ちは。

「なんで私がこんな目にあわなきゃいけないんだろう」

思わずこんな言葉が漏れたしまった。

渚さんは優しく手を握ってくれた。

東京。たぶん、光輔も景子もこの町にいる。どこかで会えるかもしれない。

会えるとしたら会うか?会ったら何を話す?

分からない。

だけど、全てを終わらせなければいけないは事実だった。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

光輔らが不審な車を目撃していたことなど手がかりはあるものの、結局莉子は見つからず

事件の混乱で卒業式は中止が決定

タイムカプセルを埋めたときを最後に光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。

 

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