「むかブロ?」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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光輔
二〇一八年、年末。年を越せば二〇一九年。あの事件から九年が経とうとしている。
俺は今は二十四歳。完全に社会人となってしまった。
卒業式をやることが出来ずに中途半端に去ってしまった、俺たちの百白中学校。それが廃校になると親から連絡があった。
あの事件があって、学校は世間の注目の的となった。
俺は卒業式があったはずの翌日にあの村を離れたが、本当にそれで良かったと思っている。
学校にはマスコミが押しかけ、村は今まで見たことないくらい人が溢れたらしい。俺も徳島の寮で何度もニュースで地元が取り上げられているのを見た。
景子の家にもしつこくマスコミが来たらしい。俺のお父さんやお母さんもインタビューを受けていた。
ただでさえ友達のお姉ちゃんがいなくなっているのに、加えてそんなマスコミの人たちを見たら、俺だったらストレスがたまりにたまっていたと思う。
マスコミは「誘拐」事件として、あの事件を扱った。
俺と景子があの事件の前日に見た黒い車。あとから益川さんから直接聞いたのだが、盗難車だったらしい。盗難被害にあった車の持ち主は見つかったが、莉子ちゃんとの接点はもちろん無く、事件当日のアリバイもあった。益川さんに持ち主の写真を見せてもらったが、全く見たことがない人物だった。名前もちゃんと覚えていない。
その盗難車はあの日以来どこにも見つかっていない。Nシステムと呼ばれる高速道路などに設置されているナンバープレートを読み取る装置があるらしい。全国のそれを調べたが「世田谷9‐14」のナンバープレートは見つからなかった。
村周辺の防犯カメラなどもくまなく調べた。それらしき車が写っているのは発見されたが、事件の核心をつくような映像は無かった。事件以降、車の行方を追っているが、車の目撃情報すら八年以上一つも無い。
ただ、盗難車があの日、幽霊トンネルにいたという俺たちの情報はやはりかなり有効だったらしい。その情報をマスコミが掴むと、その車で犯行が行われたのではないかと推測された。結果、この事件がニュース番組で扱われるときは「誘拐」事件と表現された。
胡散臭い大人たちが「誘拐」だの「遭難」だの、ひどいときは「神隠し」だのとテレビで言っているのを見るのは本当にうんざりだった。
俺はというと鳴かず飛ばずの学生生活だった。高校生になって最初の大会こそ全国大会の決勝まで行った。しかし、そのあとは膝の故障に悩まされて練習もままならない日々が続いた。辛いリハビリを何度も乗り越えて復活しようとしたが、そのたびにまた違う場所を故障。結局、高校生は最初の大会が一番いい成績だった。
それでも陸上を諦めきれなかった俺は嫌いだった勉強に力を入れた、一般入試で東京の体育大学に入学した。陸上部に入って、もう一度這い上がろうとした。だけど、レベルの差は歴然で練習についていくのがやっと。古傷を再び痛めたりと踏んだり蹴ったりだった。
大学で何も成果を残せないまま卒業。そのまま東京の普通の企業に就職した。
あの日の事件のことは、やっぱり日に日に風化していくのを感じた。自分自身、ふと忘れているときも多々あった。
でも、たまに寝る前に脳裏に莉子ちゃんの顔が浮かぶ。
自分が出来ることはやったつもりだった。益川さんはかなりいい人で俺のような素人の話も全部聞いてくれた。時々、電話もくれる優しい人だった。
あの日挙動がおかしかったタッチこと上杉先生。その後重要人物として事情聴取したそうだが、事件が起こった時間帯にはアリバイがあった。
「どんなアリバイがあったんですか?」
俺は電話口で益川さんに聞いた。しばらくの無言があったあとにこう言われた。
「それは言えない」
タッチが何か悪いことをする人ではないということと、益川さんへの信頼はあったので、あの日のタッチは事件に関係ないと俺は信じた。
中学校を卒業してからもタッチとはたまに連絡を取っている。大学入学などの報告をすると「おめでとう」とメッセージをくれた。景子とも連絡を取っているらしいが、やはり心菜とは連絡はつかないらしい。
莉子ちゃんが唯一、部屋から持ち出したとされる携帯電話。
「あれのGPSとかって調べれたりしないんですか?」
高校の入学式直前にふと思ったので、益川さんに電話で聞いた。俺の考えはもちろん警察内でも出ており、それは捜査済みだった。
「調べたんだけど、最後に形跡があったのは百白村の山の中だったんだ。君たちが車を見た付近で最後の信号を観測していた。だけど、それ以降は全くない」
「ってことは、あのあたりに携帯が落ちてたりしなかったんですか?」
「もちろん警察数百人を投入して、あの山全域を捜索したよ。でも見つからなかった」
それから何回か携帯電話についても聞いてみたけど、進展は無し。
益川さんはあそこで電源が切られて、そこからずっとオフのままどこか遠くへ持ち出されたのではないかと言っていた。莉子ちゃんが一人で失踪していたとしても、何者かによって誘拐されていたとしても、あの村とは離れた場所で携帯電話は処分された可能性が高いとの見方だった。
つまり、事件は完全に迷宮入りしていた。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める
卒業式当日
景子の姉である莉子の失踪事件が起こる
光輔らが不審な車を目撃していたことなど手がかりはあるものの、結局莉子は見つからず
事件の混乱で卒業式は中止が決定
タイムカプセルを埋めたときを最後に光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう
【登場人物】
・福山光輔(ふくやま・こうすけ)
男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。
・佐々木景子(ささき・けいこ)
女性。百白中学校出身。さばさばした性格。
・泉心菜(いずみ・ここな)
女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。
・佐々木莉子(ささき・りこ)
女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。
・上杉史也(うえすぎ・ふみや)
男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」
・益川正義(ますかわ・せいぎ)
男性。莉子失踪事件を担当する刑事。
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ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです
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