明日何しようかな?#20

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

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莉子


遺書も書かずに突然死のうと思った。そりゃみんな悲しむだろう。「なんで?」って。だけど、無理矢理未来を描くのが苦しいなんて、きっと誰も理解してくれない。私がこんなに苦しんでいるのだから、みんなも苦しめばいい。なんで莉子は死んだのかって苦しめばいい。そう思った。

死ぬ方法を携帯電話で調べる。どれもこれも辛いものばかりだった。失敗したら後遺症が残る。周りの人にも危害が及ぶ。実際に後遺症が残った人のメッセージなんかが載っている。結局、最後はこう書かれている。自殺はやめよう。

違う。私が求めているのはそんなことじゃない。心の相談室みたいなところへの電話番号が欲しいんじゃない。脅されて自殺を止めてほしいんでもない。

私はただただ楽になりたい。それだけなのに。

死ぬ怖さとそれでも死にたいという気持ちが揺れ動く。それとともに時間は流れ続ける。大学受験はいつかやってくる。これから逃れるのは絶対に無理だ。

どうすればいい。私はどうすればいい。

そんな私に手を差し伸べてくれる人がいた。私の発していた小さなSOSに気づいてくれる人がいた。

「僕なら君を楽に出来ると思うんだ」

突然私に差した一筋の光。もう限界まで追い詰められていた私にとってそれは奇跡としか言いようがなかった。

私にとって彼は救世主だった。何も疑うことなく彼の言うことを信じた。

楽になれる。彼についていけば楽になれるんだ。

「いいのか?」

運転席の彼が言う。

「うん」

「僕がエンジンをかけたら、もうこことはお別れだ。いいんだな」

あまりに大事な質問だった。「うん」と答える以外の選択肢はなかった。だけど、本当にこれでいいのかとささやく自分もいた。

家族や妹はどう思うだろうか。村の人はどう思うだろうか。

ここで「うん」と答えたら、もう絶対に過去に戻ることは出来ない。

私はここまでの人生を捨てる選択をした。そしてこの人の言うことを信じることにした。この人なら私の望んだとおりにしてくれる。

「うん」

「オッケー。大丈夫。それで大丈夫だよ」

彼は安心させるように私にそう言ってくれた。

車の大きなエンジン音が響く。真っ黒の闇の中で真っ黒な車が静かに動き始める。彼は大きくハンドルを切った。

ゆっくりと車がこの村に背を向けて走り出した。

なぜか分からないけど涙が出てきた。「これでいい」何度も何度も自分にそうつぶやく。

「はい」

彼がペットボトルの水を渡してくる。

「飲みな」

私はそっとキャップを空けて水を飲む。緊張で喉がうまく開かないけれど、なんとか押し込む。

視界は少しずつ活気のあふれた町並みへと変わっていく。何もない田舎の面影が段々と減っていく。

私は私を捨てた。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月

中学卒業を間近に控えた三人は記念にタイムカプセルを埋めようと企画する……

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。

・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。

・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。

・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。

・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」

・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。

 

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