明日何しようかな?#72

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~三章(#1~#58)のまとめ読みはこちら

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光輔


「私、こんなんでいいのかな?」

泣きじゃくる妻の涙をひたすら拭ってあげる。それくらいしか出来なかった。

珍しい。普段明るいはずなのに、こんなに泣いている妻は初めてみたかもしれない。

少し落ち着いてきた妻はゆっくりと話し始める。

「患者さんが、今担当している患者さんが死んじゃいそうなの……」

妻は病院での話をし始めた。長い長い話だった。

まとめるとこうだ。ここ数ヶ月つきっきりで見ている女の子の患者がいて、その子は余命宣告されている。だから病院の目を盗んで東京の行きたいところや本人のやりたいことを叶えていた。そんな子の定期健診があったが、やっぱり病状は回復せず、もういつ亡くなってもおかしくないとのことだった。

いつもは元気な妻が弱るようなことって何だろうかと心配したが、思っていたより大きな悩みだった。

俺はギュッと妻を抱きしめた。とりあえず、それぐらいしか出来ることが無かった。

「それで最近家に帰ってきてもすぐ寝てたんだね」

妻がうなずいているのが肩ごしに伝わる。

「渚は頑張りすぎだよ。もう十分頑張ってる。きっとその子も喜んでるよ」

今度は反応がない。分かっている、そんな言葉を求めているんじゃないことくらい。でも、こんなことしか言えない。自分が情けない。

いたずらに時間だけが過ぎていった。さっきチューハイを飲んでいるときよりも数倍時間が遅く感じた。どうしようもなく、困っているのが本音だ。だけど、俺には妻を元気に出来る魔法はない。

「ごめん……」

やっと俺から顔を離し、落ち着きを取り戻す。顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

「その子ね、タイムカプセルを掘り返したいんだって」

タイムカプセル?突然の単語に戸惑っている俺に妻は続ける。

「大阪の子なんだけど、大阪に埋めてあるタイムカプセルをどうしても掘り返したいって」

どうやら、それが叶えられそうにないらしい。大阪に戻る時間や体力が無いということだろう。

タイムカプセル、そういや俺も埋めたな……とふと思い出す。今はどうでもいいことだとすぐに忘れた。

「その子ね、中学時代の仲が良かった子たちにも会いたいって、今日言ってて」

心臓が一拍大きくなる。

まさか。……いや、そんな。

「なあ渚」

「なに?」

「その子名前なんて言うんだ?」

「え?」

「その女の子の名前」

妻は少し考えている。言っていいのか迷っているのだろう。

俺はすぐに次の質問に移る。

「心菜……泉心菜じゃない?」

「ウソ!?なんで知ってるの?」

そのまさかだった。

今までの全ての点と点が線で繋がる。

心菜は今東京にいる。そして、妻である渚が担当している患者だ。あの日見た心菜も本当に心菜で間違いなかったんだ。

「渚……驚かないで聞いてくれ」

俺は中学時代からの全てをゆっくり話し始めた。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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