明日何しようかな?#73

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~三章(#1~#58)のまとめ読みはこちら

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景子


キーン、キーンと高い音。聞き覚えのある音。

それだけが脳内を駆け巡る。ひょっとすると、お姉ちゃんかお姉ちゃんを連れ去った犯人が出した音かもしれない。

今日一日で色んなことがたくさん起きた。心菜との再会できたのは素直に嬉しかった。だけど、心菜に残された時間が少ないことも知った。再会の喜びと心菜の病気の悲しみが同時に襲う。

家に帰ってきてからも、その複雑な気持ちは晴れなかった。

ただ、前向きに物事を捉えるのなら、ちゃんと心菜が光輔と連絡を取れば、三人はまた再会できるかもしれない。タイムカプセルを一年早いけど掘り返せるかもしれない。

ポケットのスマホが震える。見ると、光輔からの着信だった。

そういえば、こないだ着信もらったんだっけ。気づいたのが夜中だったからかけ返すのをやめて、そのまま放置していた。

私は電話に出る。

「景子か?」

「うん」

「お前、今日、心菜に会ったんだって?」

「ええ?」

なんで知っている?突然の恐怖を感じる。私が質問する前に光輔は畳みかける。

「今日、渚って看護師とも会っただろう?」

「え?うん」

「そいつさ、俺の……なんて言うんだ?奥さんなんだよね」

一瞬では理解できなかった。電話に出て、まだ一分も経っていない。そんなすぐには飲み込めない。

「どういうこと?」

そこから光輔の長い話が始まった。

光輔の話は驚きの連続だった。今日会った心菜の担当の看護師さんは光輔の妻だった。渚さんが心菜の担当をしていて、景子と出会ったことをたった今、渚さん本人から聞いたところらしい。

「分かるか?俺の言ってること」

光輔も途中でよく分からなくなっている。

「うん。分かるよ」

「それで今、景子にとりあえず電話したってわけ」

「…………」

つまり私とほぼ同じタイミングで、心菜が病気に侵されているという状況を知ったということになるのか。

「……俺もちゃんと全部は分かってないかもしれない」

「うん」

「だけどさ、もう一回ちゃんと三人で会おうよ」

大混乱している頭の中で光輔の言葉が響く。良かった。おんなじこと思ってくれている人がいた。

「そうだね」

「よし」

「心菜から連絡はあった?」

「まだ」

さっき私と別れてから心菜はまだ光輔に連絡していないらしい。すぐにでもしろって、連絡先教えてあげたのに。

「心菜に連絡先教えたのか?」

「うん」

「早く連絡してこいよ……」

私もそう思う。だけど、躊躇っている心菜の気持ちも分かる。

渚さんが持っていた「心菜のやりたいことリスト」。ふざけた項目の最後二つ。

・タイムカプセルを開ける
・好きな男の子に告白する

たしかにそう書いてあった。

心菜いわく渚さんがふざけて書いたと怒っていた。だけど、ウソではないんだろう。

心菜の中ではまだ気持ちの整理はついていないということだ。

だけど……、あのメモを見たときに光輔が結婚していることは言えなかった。ましてや、いつも一緒にいる看護師さんが奥さんだなんてことも今知った。

どうしよう。どう伝えればいいんだろう、心菜に。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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