明日何しようかな?#67

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~三章(#1~#58)のまとめ読みはこちら

縦書き

横書き

~~~~~~~~~~~~~~~

景子


「本当はいけないんです、こんなことしちゃ」

病室に戻ると、渚さんはカバンの奥に隠しておいたドーナツを取り出す。心菜はベッドで相変わらず下を向いている。

「でも、どうしても放っておけなくて……」

渚さんはたぶんいい人なんだろう。「看護師」という枠を超えて、心菜のことを本気で考えている。心菜もそれが嬉しかったんだろう。

「すみません、少し席を外しますね」

渚さんはそそくさと病室を出ていった。

心菜と二人きりになる。どこか気まずい。言いたいことはいっぱいあるはずなのに。

「……ごめん」

心菜が先に口を開く。

「もういいよ、それは」

「…………」

「そっか、それでタイムカプセルを早く開けたいってお願いしたんだね」

心菜はうなずく。

つい「病気のことを言ってくれれば……」と言いかけてやめる。また「ごめん」が返ってくるだけだ。

「光輔にも連絡取ってないんでしょ?」

心菜はうなずく。

「私からとりあえず電話するよ。そのあと、心菜からもちゃんと話したいこと話しな」

「うん」

外は暗くなり始めていた。

「学校、つぶれるんだって」

「ええ!?」

心菜がさっきまでの返事と違い、大きなリアクションを取る。

「廃校になるってさ」

「そうなんだ……」

「タイムカプセルは大丈夫だと思うけど。でも、つぶれる前に一回行っておきたいな」

「……行きたい」

心菜の表情はまだ硬い。

「タッチもたまに連絡くれるよ。元気そう」

「良かった」

「心菜のことも心配してたよ。全然連絡取れないって」

私もタッチと直接会ったのは、高校二年生が最後。たまに電話してくれるけど、声しか聞いていない。

「あと、刑事の益川さんって覚えてる?」

「……うん」

「今年の三月で定年なんだって」

「…………」

これがどういう意味か心菜もすぐに感じ取ったみたいだ。もうすぐ、事件最後の灯が消える。

「事件はさ、なんか進展ないの?」

今度は心菜の質問。

私は首を横に振る。

「そっか」

心菜は話そうか迷ったまま話し始めたような口調で切り出した。

「こないだね、渚さんと出かけた帰りに、莉子ちゃんにそっくりの人見たの」

「え!?」

「アパートの外から見たら、部屋の中に莉子ちゃんがいてさ。「ええ!?」って思って、私思わず部屋まで押しかけたんだ」

心菜は話しながらも目を合わせてはくれない。

「ノックして。中から人が出てきて。そしたら、本当に莉子ちゃんにそっくりなんだけど、やっぱり別人だった」

心菜も心菜なりに事件のことを考えてくれているんだ。光輔もそうだけど、本当に申し訳なくなる。私のせいで余計な心配が一つ増えて。

「莉子ちゃんがそんな普通に生活してるわけないのにね」

もしどこかで普通に生きているのならいいのに、とは思う。


つづく


~~~~~~~~~~~~~~~


【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

【むかいくんを応援したい!感想を送りたい!という方へ】

・一番嬉しい最上級に喜ぶやり方

Twitterで「#むかブロ」をつけて感想を投稿する

ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです

#明日何しようかな もつけてもらえると大変喜びます

このブログへのリンクが貼ってあるツイートを引用リツイートしてもらえると感無量です


・ちょっと嬉しいやり方

Twitterでリプライを送っていただく(@mukatsubu)

誰かに見られたくなければ、DMでもかまいません

DMは誰でも送れるように開放しています

現在閲覧しているはてなブログ「むかブロ?」はコメント欄を封鎖する予定です(気づくのが遅くなると思うので)

なので、たまに更新しているアメーバブログ「むかブロ!」にコメントいただけると嬉しいです

仲の知れたあなたならLINEでもかまいません


・恥ずかしいけど感想を送りたい人のやり方

質問箱に感想を投稿してください

https://peing.net/ja/mukatsubu

「質問箱」は本来は匿名で質問を送ることの出来るツールです

が、僕は一方通行のメッセージを送るツールとしても使っています

これを使えば、どんなメッセージでも完全に匿名で送ることが出来ます

むかいに認識されたくない、だけど感想は送りつけたい

そんなあなたは質問箱に投稿してください

ただし返信は出来ません(誰か分からないので)

特に断りがない限り「これは向井だけに送りたい感想だな」と思ったらTwitterやブログで公開するのは控えます

匿名だけどみんなに見られてもいい、むしろみんなにもこの感想を読んでもらいたいという方は

その旨を質問箱に書いてください

Twitterなどで共有します