明日何しようかな?#8

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

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光輔


そんな因縁のトンネルに入れるのも今日が最後かもしれない。冗談のつもりで景子に「抜けてみない?」言ってみようとした。正直、バリケードも中学生なら簡単に乗り越えられる質素なものだ。

「あんた、あんなに怒られたのにまだそんなこと言ってるの?」

そう言いながら、景子はトンネルの横の階段を上り始める。俺もあとを追う。

「冗談だよ」

「あんなに泣きじゃくってたのに」

そうだ。ガキだった俺はずっと怒られて、ずっと泣いていた。

「だから冗談だって」

前を行く景子の顔は見えないがたぶんニヤニヤしているのだろう。景子は泣いている俺を見ていつも笑う。陸上の大会でいい結果が出せずに泣いていたときも景子は「泣いてる」と笑ってきた。さすがにそのときは腹が立った。

景子はそのあとも「あのときも泣いていたな~」って散々小さい頃のエピソードでからかってくる。

「景子だって、あのときめちゃくちゃ泣いてたじゃん」

俺はやられっぱなしはイヤだったので、やり返す。

「でも、あんときは光輔が悪かった……」

「あれは景子が余計なこと言うから……」

心菜がいないから俺たちの言い争いを止める人はいない。だけど、俺たちのこのくだらないやり取りも今日はなんだか感慨深い感じがした。

あれもこれも、明日で最後。その寂しさを感じているのは俺だけじゃない。景子も前を歩いているから表情は分からないが、言葉には少し元気がなかった。

俺たちは展望台に着いた。時間もちょうど良かった。あと五分もしないうちに夕日が沈みそうだ。

この展望台を俺たち以外の人が使っているのを見たことがない。屋根とベンチがあるちょっとした休憩所。昔は山頂に売店があったらしく、ハイキングに訪れる人もいたらしい。今はそんな観光客は一人もいない。山頂は何度か登ったことがあるが、今は携帯会社のアンテナが立っているだけで、行っても何もない。

年月だけが過ぎ、この小さな展望台だけポツンと残された。ベンチは木で出来ているが、もう雨風にさらされボロボロ。屋根もいつ壊れてもおかしくない。

だけど、ここから見る夕日は本当に綺麗だった。俺たち三人が昔、探検隊ごっこをしたときに見つけた穴場だった。それから今に至るまで、時々登っている。

他の学年の友達にはあまり教えたくなかった。別に隠すことではないし、見つけようと思えば簡単に見つかる場所だ。だけど、なんとなく「三人だけの秘密基地」のような気分だった。

「なんか飲もっか」

俺が言うと、景子もうなずく。

二台並んでいる自動販売機で俺たちは飲み物を買う。お小遣いをもらったときやちょっと誰かがめでたいことがあったときは飲み物を買って乾杯するのがお約束だった。誰かが誕生日のときとか、俺が大会で優勝したときとか。

俺はコーヒー。景子はコーンポタージュ。二人とも冬はいつもこれ。心菜はいつもココアだ。

俺たちはボロボロのベンチに座る。このベンチの裏側に三人で落書きしたこともあったっけ。たしか小学生のとき。なんて書いたか覚えてないけど、三人で悪い顔をしながらペンを走らせた思い出がある。

特に何も言わずに俺たちは乾杯した。

 

つづく

 

 

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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月

中学卒業を間近に控えた三人は記念にタイムカプセルを埋めようと企画する……

 


【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性
百白中学校三年生

・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性
百白中学校三年生

・泉心菜(いずみ・ここな)

女性
百白中学校三年生

 


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