明日何しようかな?#130

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

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光輔


中学生のときに、一度だけ二つ年下の女の子に告白されたことがある。

「光輔ってさ、告白されたことねえの?」

高校の友達に聞かれた、なんでもない質問。男子も女子も入り混じって数十人でおしゃべりをしてたと思う。

「一回だけある」

俺は別に隠すことでもないかなと思って、中学のときの告白された話をした。もちろん振ったんだけど、どうやって告白されてどうやって振ったのかを話した。

「ええ?福山君、それは女の子が可哀そうじゃない?」

周りにいた女子の反応。そっか、やっぱり俺の態度は冷たいのか。

少しずつ歳を取るにつれて、自分のあのときの態度を反省するようになった。「告白」なんて、「恋愛」なんて、自分はまだ早いと思ってた。でも、あの子は人生をかけた大一番だったのかなって。

女の子を振るのは、これで二回目。あの中学の後輩と今。

「びっくりした」

「…………」

「俺、別に心菜のことは嫌いではないけど、そっか……」

心菜も心菜で悩んでいた。俺が焦っていたときに。

なんかまただな。松尾のときと同じ気持ちになる。松尾と心菜を一緒にしちゃダメかもしれないけれど。

「でも、ありがとう。……うん、ありがとう」

「え?」

「心菜と友達で良かったなって。そういうありがとう」

自分の気持ちを相手に伝えるとき、こういうストレートな表現しか思い浮かばない。だから、相手の気持ちを汲み取るのも苦手なんだろう。

「今、なんか走馬灯みたいなのが流れて。俺、他人の愛情とか友情をたくさん無視してきたのかなって思っちゃった。心菜はこうやって俺に分かるように伝えてくれた。だから、ありがとう」

「私だって、景子や渚さんがいなかったら、言えてなかったと思う。だいたい、もう結婚してる人に告白するなんて、私おかしなことしてるし……」

「そんなこと出来るのたぶんこの世で心菜だけだな」

「え?」

「俺も意味分からなかったよ。「好き」って言われたとき。何言ってんだこいつって思った。からかってるのかと思った」

景子が隣にいたら今の俺の発言は止められているんだろうな。でも、俺は続ける。

「でも、まあ、心菜らしいなって思って。心菜ならありえるかなって。そう思えるような相手もなかなかいないと思う」

「…………」

「のろまで、何をするのもワンテンポ遅くて、いっつも俺と景子の後ろを歩いて。それでも、気が付いたら隣に追いついてる」

心の距離を空けても、心菜はすぐに追いついてきた。

「今回は九年もかけて追いついたんだなって。もっと早くって思うけど……言えないよな。そりゃ言えなかったよな。それは本当に申し訳ない」

「いや……」

「心菜の告白。ちゃんと受け取ったよ。いつまでも忘れないし、忘れられないと思う。心菜のその気持ちは無駄にはしないから」

心菜の気持ちも。この状況を作った、あの二人の気持ちも。

「これからも……………………、友達でいような」

もしも、九年前に無事卒業式が行われていたら。もしも、九年前に心菜から告白されていたら。俺はなんて返しただろう。今、一瞬だけそんな疑問がよぎったけれど、今も九年前も答えは同じだろうなって思う。

心菜は「友達」だ。

「光輔」

「ん?」

「ありがと」

心菜は飛び切りの笑顔で返す。

これで良かったのかな。心菜の笑顔が偽りの笑顔ではないことだけは分かってしまうのが、今は辛かった。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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