明日何しようかな?#110

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~五章(#1~#96)のまとめ読みはこちら

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光輔


「私のせいで、お姉ちゃんはあんな男のこと信じたのかな?」

声が震えている。泣いているのか?

「そんなことないよ」

「…………」

「莉子ちゃんはどこかで道を間違えたんだ。間違えたまま、次の道も間違えて、その次の道も間違えてこうなった」

それが景子を励ませているかは分からない。だけど、何か言わないとどうしようもない。

「莉子ちゃんはこれから先の人生の方が長い。今すぐには分かってくれなくても、いつかはあの日の莉子ちゃんに戻ってくれるはずだよ。景子は自分を責めるんじゃなくて、これからのこと考えたほうがいいよ」

ぐすっぐすっと鼻をすする音が聞こえる。

「会ってなんて言おう」

景子が聞いてくる。それは俺も分からない。

「会った時自然に言葉が出てくるよ、きっと」

自分でも適当な返事なのが分かる。大したことが言えなくて悔しい。

「ありがと」

景子は再びお礼を言う。どうやら分かってくれたみたいだ。

「別にいいよ」

景子は泣き止んでいた。

「このまま武道館に向かっていいか?」

景子は小さくうなずく。

俺たちを乗せた車は夜の町を突き抜けた。

車は武道館の目の前まで来ると、路肩に駐車する。武道館の周りにはラブメロのグッズを持った人がたくさんいた。どうやらライブは終わったらしい。

警察の人と武道館へ向かう。流れる人混みを逆流しながら、ゆっくり正面玄関へ向かう。

「ここからは僕たちが中へ向かう。君たちはここで待っていなさい」

俺たちは指示に従った。

取り残された間、会話は出来なかった。そわそわしながら、ああでもないこうでもないと考える。

人影はどんどんまばらになった。お客さんもほとんどが帰路につき、武道館に残っている人は少ない。

「光輔?」

誰かが俺を呼ぶ。振り向くと、渚がいた。

「渚……」

隣にいるのは……間違いない、心菜だ。まさかこんなところで再会するとは。

「光輔……」

心菜は驚いて声が出ていない。

「景子さんまで……、なんで光輔がここにいるの?」

代わりに渚が聞いてくる。俺は咄嗟に返事が出来ない。さっきから返事に困ってばっかりだ。

「いまに分かると思う」

渋々返す。もちろん二人は納得していない。

「どういうこと?」

心菜もたくさん言いたいことはあるんだろうけど、今は俺たちがここにいることの理由を求めている。

「……ごめん、あとでちゃんと全部説明する。今はちょっと待ってくれ」

俺のただならぬ表情を見て、二人は黙る。良かった、分かってくれたみたいだ。

関係者区域からスーツの人影が現れる。その人影の中に一人女性がいる。

ソヨン。ラブ&メロディーのメンバー。こんなに近くで見ても、あの日の莉子ちゃんの面影はない。カバンなどに荷物をまとめて、うつむいて歩いている。

スーツの集団は俺たちの目の前まで来た。彼女も俺たちのことに気づいている。目を合わせてはくれない。

誰もしゃべらない。沈黙が続く。俺も、景子も、心菜も、渚も、ソヨンも、警察の人も、誰も何も言わない。

「お姉ちゃん……」

景子が切り出す。

「お姉ちゃん、分かる?」


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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