「むかブロ？」140日連続更新企画
自作小説を連載しています
温かい目で読んでください
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光輔
卒業式の朝……のはずだった。
いつも起きる時間より早い時間に母親が俺の部屋に入ってきた。
「光輔、大変よ」
どうせ大したことないんだろうなって、もうちょっとだけ寝かせてくれよって、このときは思った。
「莉子ちゃんがいなくなったんだって」
その言葉を聞いたときはまだ事の重大さが理解できていなかった。
「警察の人が来てる」
俺は今が現実であることを確認しながら、とりあえず母に言われたとおりに着替えた。一階に行くと、スーツを着た男が一人いる。いつも家族でご飯を食べるテーブルに座っていた。
「光輔くんですか」
「はい、そうです」
どうしていいか分からない俺の代わりに母が答える。
「朝早くにすみません。光輔くん、少しだけ話がしたいんだ、いいかな？」
俺は小さくうなずき対面に座る。
「私、刑事をやっています、益川と申します」
益川さんは中学生の俺にも丁寧に頭を下げる。
益川さんはおそらく五十代くらいの渋い男の刑事さんだった。歳を重ねている感じは見て取れるが老いている感じは全くない不思議な人だった。なんと言うか、すごく若々しい雰囲気がにじみ出ている。
当然益川さんの表情はかなり強張っており、真剣なまなざしをしている。それなのに、どこか優しさ感じる人だった。まだ顔を見て十秒も経っていないが、なんとなくちゃんと「いい人」なんだろうなと分かる感じ。
俺がテーブルにつき、この空気を察したところで益川さんは切り出した。
「さきほどお母さまからも少し聞いたかと思いますが……」
その内容はこうだ。
景子のお姉ちゃんである莉子ちゃんが行方不明らしい。最後に目撃されたのは昨日の夕方。高校から帰っているところを町の人が見かけていた。
自宅には学校用のかばんは置いてあり、自宅には一度帰宅した痕跡が残っていた。佐々木家には昨日は一日中誰もいなかったとのこと。昨日俺と別れたあと景子が帰ったときも家には誰もいなかったそうだ。
部屋からは携帯電話だけがなくなっていた。あとは制服と靴は見つかっていないので、身につけたまま行方不明になったのではないかと推測されている。
最後の目撃情報が十七時。そこからは一切、莉子ちゃんは目撃されておらず、連絡もついていない。
莉子ちゃんの携帯電話に電話やメールは何度もしたらしい。しかし、電源が入っておらずもちろん返信もない。
景子のお姉ちゃんである莉子ちゃんとは何度も遊んだことがある。高校二年生だ。次の四月からは高校三年生でいよいよ本格的に大学受験の勉強を始める時期だ。景子とは顔は似ているがお姉ちゃんのほうが大人しい。静かな女の子だった。
俺たちは「莉子ちゃん」と普段から呼んでいる。高校も府内の名門私立高校に通っていて成績も優秀。町の人もみんな「頭のいい」「礼儀正しい」という印象を持っていた。
小さな頃はたまに俺と心菜と景子の三人に加わって遊んだ。まだ「先輩」や「後輩」なんて考えが無かった頃だ。歳の違う近所の友達大人数で大縄をしたり、かくれんぼをしたりして日が暮れるまでひたすら遊んだ。
莉子ちゃんが中学校に入学したあたりから一緒に遊んだりすることはめっきり少なくなった。それでもこの田舎だからすれ違うことはよくあった。高校の制服を着て帰宅する莉子ちゃんを何度も見たことがある。
その莉子ちゃんがいなくなった。
つづく
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【「明日何しようかな」あらすじ】
大阪にあるド田舎な村「百白（ひゃくしろ）村」
学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった
二○一○年三月
中学卒業を間近に控えた三人は記念にタイムカプセルを埋めようと企画する……
【登場人物】
・福山光輔（ふくやま・こうすけ）
男性
百白中学校三年生
・佐々木景子（ささき・けいこ）
女性
百白中学校三年生
・泉心菜（いずみ・ここな）
女性
百白中学校三年生
・佐々木莉子（ささき・りこ）
景子の姉
・上杉史也（うえすぎ・ふみや）
男性
百白中学校の先生。通称「タッチ」
・益川正義（ますかわ・せいぎ）
男性
刑事
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