明日何しようかな?#69

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~三章(#1~#58)のまとめ読みはこちら

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心菜


「ほんと馬鹿だね」

そう言われた瞬間、つい笑ってしまう。景子も笑っている。

良かった。今までこのことを黙っていたことを怒られるかもしれないと思っていた。でも、景子は許してくれたみたいだ。いや、本当は怒っているけど我慢していたかもしれない。

でも久しぶりに景子の笑顔を見ることが出来た。

「で、そんとき、車しか見てないの?変な人とか見なかった?」

「見てないよ。見てたらさすがに正直に話すよ」

「そっか」

私はあの日を思い出す。

タッチと別れたあと、財布がどこにもないことに気づいた。ポケットにもリュックにもない。自分の記憶を辿ると、写真屋さんの机に置いたことを思い出した。

そのとき時刻は十七時を過ぎていた。普通のルートで隣町と百白村を歩いて往復すると二時間はかかる。

もう一度タッチを呼んで車を出してもらうか?写真屋さんに電話して確認してもらうか?色んな選択肢を考えた。が、一番簡単で一番危ない選択肢が浮かんでしまう。

そう「幽霊トンネル」を通ることだ。

あのトンネルは昔、光輔がふざけ半分で入って、大人たちにこっぴどく叱られていたのを覚えている。普段泣かない光輔が泣いているから余計に覚えている。

でも、私はあのトンネルに入ってはいけないのが不満だった。なぜなら、あそこを通ったほうが圧倒的に隣町へ行きやすいからだ。

明日で中学卒業。もう私も高校生。そんなちょっとトンネルを通っただけで、大問題にはならないだろう。それにバレないだろう。

そんなことを思いながら、私はトンネルを通った。

そして、普段見ない黒い車も見た。「変だな」とは思った。

「あ、でも……」

「なに?」

「変な音は聞こえたんだよね」

「音?」

これからトンネルを通ろうという入り口。横には不審な車が止まっていた。中に誰かいたかとかはあんまり覚えていない。車の影もぼんやりとしか見えてなかった。

だけど、キーンキーンという音が聞こえた。私はトンネルに「入るな」と脅されているみたいで、鳥肌が立ったのを覚えている。それでも、トンネルに入ったけど。

「高い音?」

「そうキーン、キーンって」

「なんの音?」

「分かんない。だけど、聞きおぼえのある音だなって気がしたの」

景子は手をあごにやり考える。

「え?そんな大事なことかな?」

「……分かんないけど、でも、なんかの手がかりかも」

私は思っていたより真剣な目つきの景子を見て焦る。

「いやでも、気のせいだったかもしれないよ?」

「…………」

聞いてない。

こんな真剣に考えている姿を見ると、少し私も不安になる。もし、この「音」が事件に関係のあることなら、私が今まで言わなかったことで事件解決が難航したのかもしれない。

でも、たぶん大して関係ないことだと思うし、だとしたら景子を余計な考え事を増やしてしまって申し訳なくなる。

「まあ益川さんには伝えておく」

「でも……」

「大丈夫、幽霊トンネルのことは黙っておくから」

違う。そこじゃない。

景子はスマホを取り出し、何かを入力していた。たぶんメモを取っているのだろう。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。頼りがいのあるしっかりもの。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。さばさばした性格。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。寂しがりやの甘えん坊。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に失踪する。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜の味方をする。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。

 

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