明日何しようかな?#115

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~五章(#1~#96)のまとめ読みはこちら

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莉子


私はもう「莉子」じゃない。

だけどたまに夢の中で「莉子」を呼ぶ声がする。

「莉子」

お母さんの声。

「莉子」

お父さんの声。

「お姉ちゃん」

景子の声。

怖くなって目覚めると、私は決まって冷や汗をびっしりかいていた。

急いで洗面所に向かい鏡を見る。鏡に映る自分は「ソヨン」だった。それで安心して、もう一度眠る。そんな悪夢をたまに見るときがあった。

私は韓国に来てから、とにかく韓国語を磨いた。話すと片言なのがバレる。ひたすら電車やカフェで周りの韓国語を聞いて、自分の韓国語が違和感が無いようにした。

そして、夢を叶えるために芸能事務所のオーディションを受けた。早見先生の手術は本当に素晴らしく、私に莉子や日本人の面影は全くない。だけど、万が一にもアイドルとして売れてしまって、目立ちすぎるのも正直怖かった。なので、私はわざと小さな芸能事務所を選んだ。

落ちては受け、また落ちて。オーディションを何個か繰り返した結果、ついにやっと一つの事務所に合格することが出来た。私は芸能人への第一歩を踏み出した。

順風満帆とはいかなかった。だけど『莉子』としての人生の何倍も楽しかった。大丈夫、これが私の選んだ人生で、私のやりたかった人生だ。

「ラブ&メロディーのメンバーにならないか」

ある日、芸能事務所の偉い人にそう声をかけられた。私にとっては願ってもないチャンスだった。だけど、一つ心配があった。

そのグループは今までにない「多国籍グループ」だった。メンバーには日本人もいる。つまり日本での活動も視野にいれていた。

万が一、過去の自分がバレたら大変なことになる。だけどこのグループに入れば、自分の憧れた人生にグッと近付くことが出来る。

この大チャンス、どうするべきか。たくさん悩んだ。なんとか連絡先を手に入れて、早見先生に相談しようかとも思った。でもすぐに我に返る。そんなことしちゃダメだ。今の私にとって早見先生は関係の無い人。もう自分のことは自分で考えなければいけない。

「やらせてください」

私はラブ&メロディーのメンバーになった。

とは言っても、すぐには人気は出なかった。目立ったらどうしよう。そんな私の心配はしばらくは杞憂だった。小さな会場でガラガラの客席を相手にパフォーマンスをする日々。

それでも、めちゃくちゃ楽しかった。歌って踊っているときが一番楽しかった。辛いことや過去のことを忘れていられる。ソヨンとしていられる。

私はひたすら踊った。自分を忘れるくらい必死に踊った。踊って踊って、過去を忘れた。

少しずつラブメロは人気が出た。口コミやSNSでのマーケティングも成功し、じわじわとファンを増やした。

ライブの会場が大きくなればなるほど、私は必死に踊った。たくさんの人の前に立つことの喜びと心にこびりついたなかなか消えない不安を忘れるために。

時間が経つにつれ、こんなに目立つ活動をしても日本人の一人も私の過去に気づいていないと徐々に自信がついた。自分を「莉子」と呼ぶ悪夢はそれでもたまに見たけれど、もう二度と「佐々木莉子」として生きることはないと信じていた。

それがある日、突然大きな音を立てて崩れた。

日本での武道館ライブ。全ての演目が終わり。いつも通り楽屋でメンバーと談笑していた。なんでもない日常。普通のライブ終わりの一コマ、のはずだった。

「失礼します。警察です」

まだそのときは事態を把握していなかった。警察?なんか事件でもあったのかな?そんな感じ。

「ソヨンさん、いらっしゃいますか」

私?そのときもまだ何か分からなかった。

「なんでしょうか」

「「佐々木莉子失踪事件」の重要参考人として出頭を願いたいです」


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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