明日何しようかな?#91

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~四章(#1~#77)のまとめ読みはこちら

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光輔
 

聞いたことない名前だ。この男と毎日毎晩連絡を取っている。時折、家族の名前が混ざるが、どれだけ下へスクロールしても「早見徹」の名前しか出て来ない。

こいつか?こいつが莉子ちゃんを誘拐した犯人なのか?

「はやみとおる……」

いつの間にか両親も俺のうしろにまわり携帯電話の画面を見つめていた。

「知ってる?」

両親は首を横に振る。この村にゆかりのある人物の可能性は低いということか。

メールの受信フォルダも見る。

やはり早見徹とのやりとりがたくさん出てきた。莉子ちゃんと早見が深い関係にあったのは間違いなさそうだ。

「益川さんに電話するよ」

「うん」

俺は自分のスマホに持ち替える。

「ん?」

何十件もの通知や着信履歴に驚く。最初に目に入ったのは松尾からのLINEだったが、もう一つ気になる着信履歴があった。

「景子……」

景子から何十件もの連絡が来ている。なんだ?なにか急な用事か?

まあ今は後回しだ。益川さんと連絡を取ってからでも遅くはない。

俺は益川さんへ発信する。益川さんはすぐに出た。

「光輔くんか」

「益川さん、あの……」

「光輔くん、ちょうどいいタイミングだ。ひょっとすると犯人を捕まえられるかもしれない」

「え?」

俺はリズムを狂わされる。自分の話がしたいのに。でも、どういうことか気になる。

「さっき景子ちゃんから連絡があったんだ。あの日の例の黒い車を見たって」

なに?

「本当ですか?」

「ああ、たまたま用事で行ったお医者さんの家のガレージにあったそうだ」

「それで、そのお医者さんっていうのは……」

「男の人なんだけど」

緊張が走る。もし俺が今掴んでいる情報と合致すれば、事件は解決へ大きな一歩を踏み出す。俺はその一歩を自分から踏み出す。

「……早見徹じゃないですか?」

「なぜそれを?」

益川さんはかなり驚いている。そりゃそうだ。

「益川さん。僕の話も聞いてもらっていいですか?」

「ああ」

俺は心菜と電話したところから全てを話す。

「なるほど。よく携帯電話なんか見つけられたね」

「ああ……」

金属探知機を使ったことを話す。なぜ金属探知機を持っているのかなどは聞かれなかった。

「分かった。ありがとう」

声で分かる。益川さんは早見を犯人と断定している。もちろん、俺もそうだ。

「光輔くん。東京に戻ってきたら連絡を一本くれないか」

「はい、分かりました」

「じゃあこれで。本当にありがとう」

電話が切れる。今度は一刻も早く東京に戻りたくなる。

「光輔、今夜はどうするの」

母親が心配そうに聞く。

さすがに今から東京に戻れそうにはない。

「寝れる場所ある?」

「この部屋なら大丈夫」

「じゃあ、ここに泊っていくよ」

両親は安心してうなずいた。

「お風呂湧いてるわ」

「ありがとう」

益川さんとの連絡も終え、落ち着いて自分を見る。泥まみれの自分の汚さに気づいた。そりゃお風呂を進めるのも納得だ。

でも、その前に連絡しなきゃ。

俺は景子への折り返しをかけた。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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