明日何しようかな?#87

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~四章(#1~#77)のまとめ読みはこちら

縦書き

横書き

~~~~~~~~~~~~~~~

景子


「…………」

自分の脳が息苦しくなるくらい、色々なことが思い浮かぶ。

状況を整理する。あの日、私が見た黒い不審な車が早見の家にある。事件が起きた日に目撃した車が目の前にある。

つまり早見が犯人ということ、なのか?

まだ分からない。分からないけど、少なくとも事件に何かしら関係しているのはほぼ確実だ。この車がここにあるのは動かぬ証拠だ。

どうする。どうする自分。今、部屋に戻って、すぐに問いただすか?

そんなことしたらどうなるだろうか?あっさり早見が犯行を認めるか?いやでも、こうなると早見は最悪殺人犯である可能性も浮上する。そんなやつに武器もなく立ち向かえるのか?早見が逆上して、急に自分の命が危険に晒されるかもしれない。私はともかくすみれさんにもそんな危険な目に合わせるわけにはいかない。

ダメだ。全部「こういう可能性も……」って考えて、結局最悪のシナリオになってしまう。

気持ちは今すぐにでも問いただしたい。だけど今じゃない。落ち着くんだ。

とりあえず、今日は適当に誤魔化して帰ろう。怪しまれないように。そして、家に帰ったら益川さんや光輔に連絡しよう。

私はもう一度部屋の方を確認し、誰も見ていないことを確認する。しゃがみ込み、ガレージを覗く。

証拠に一枚写真を撮ることにした。写真でもばっちりあの日のクラウンであることが分かる。

よし、部屋に戻ろう。手足の震えを全身の筋肉を使って止める。落ち着け自分。

「おかえり」

私は早見の「おかえり」に軽く会釈をする。落ち着け落ち着け落ち着け、とにかく落ち着くんだ。

「手術はどうなりましたか?」

私は平然を装って聞く。私の問いにすみれさんは困り顔をする。

「今日はまだ決めきれないみたいです。まあ今すぐに決めることでもないので、すみれさんにはじっくり悩んでもらおうかなと思います」

すみれさんの代わりに早見が答える。さっきまでお金持ちの医者に見えたのに、途端に極悪人の顔に見える。

「じゃあ、どうする。今日はお話しだけにしとく?」

私の問いかけにすみれさんはこっくりうなずく。

「ネオンさん、どうかされましたか?」

早見が私に聞く。

「え?」

「顔色が悪いような気がして。顔が真っ白ですよ」

のどのギリギリまで「黒のクラウン」と言いたくなる。でも今はダメだ。焦っちゃいけない。

「いや、別に、気のせいだと思いますよ」

「そうですか」

自分の顔は見ていないが顔色が悪いのは自分でも分かる気がした。

「すみれさん、行こっか」

「はい」

私とすみれさんは帰ることにした。

「お気をつけて」

ジジを抱いた早見が玄関までお見送りしてくれる。

すみれさんはいつものお辞儀をして、早見と別れた。

門を出る。よし、やっと早見のテリトリーを脱出することが出来た。だいぶ気分が楽になる。

「景子さん」

「ん?」

「どうしたんですか?明らかに顔が青ざめてますよ」

やはりすみれさんも異変には感づいていたみたいだ。

「……ちょっとびっくりしたことがあって。今は話せないけど」

すみれさんは不思議そうに見つめる。

「また今度いつか話すから、ね?」

「分かりました」

私とすみれさんは駅に向かって歩き始めた。


つづく


~~~~~~~~~~~~~~~


【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

【むかいくんを応援したい!感想を送りたい!という方へ】

・一番嬉しい最上級に喜ぶやり方

Twitterで「#むかブロ」をつけて感想を投稿する

ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです

#明日何しようかな もつけてもらえると大変喜びます

このブログへのリンクが貼ってあるツイートを引用リツイートしてもらえると感無量です


・ちょっと嬉しいやり方

Twitterでリプライを送っていただく(@mukatsubu)

誰かに見られたくなければ、DMでもかまいません

DMは誰でも送れるように開放しています

現在閲覧しているはてなブログ「むかブロ?」はコメント欄を封鎖する予定です(気づくのが遅くなると思うので)

なので、たまに更新しているアメーバブログ「むかブロ!」にコメントいただけると嬉しいです

仲の知れたあなたならLINEでもかまいません


・恥ずかしいけど感想を送りたい人のやり方

質問箱に感想を投稿してください

https://peing.net/ja/mukatsubu

「質問箱」は本来は匿名で質問を送ることの出来るツールです

が、僕は一方通行のメッセージを送るツールとしても使っています

これを使えば、どんなメッセージでも完全に匿名で送ることが出来ます

むかいに認識されたくない、だけど感想は送りつけたい

そんなあなたは質問箱に投稿してください

ただし返信は出来ません(誰か分からないので)

特に断りがない限り「これは向井だけに送りたい感想だな」と思ったらTwitterやブログで公開するのは控えます

匿名だけどみんなに見られてもいい、むしろみんなにもこの感想を読んでもらいたいという方は

その旨を質問箱に書いてください

Twitterなどで共有します