明日何しようかな?#79

 「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~四章(#1~#77)のまとめ読みはこちら

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光輔


俺が全部を話し終える頃には、電車は会社の最寄り駅まで着いていた。ここから会社までは十分ほど歩く。

「なるほど。シンガポールのことだけで悩んでると思ってたんすけど、違うかったんすね」

「まあな」

「本当にごめんなさい。テキトーなこと言っちゃって」

「いいんだよ、それは」

松尾は歩きながら、深々と頭を下げてくる。やめてくれ、周りからみたらパワハラに見えるだろう。

「それで、その友達が言ってた「穴を掘る音」は何か分かったんすか」

「分かんねえよ」

「あの……」

松尾が口ごもる。

「どうした?」

「……遺体って可能性はないんですか?」

それは俺も考えた。

「いや、ないと思う。分からんけど。でも、そんな大きなものを埋めるほど時間もなかったと思うし、遺体ならさすがに警察が見つけてると思う」

「そうっすか」

警察犬なども使って捜査は行われたらしい。遺体だったらとっくに見つかっているはずだ。

何者か、もしくは莉子ちゃん本人が、何か埋められるような小さなものを埋めようとしていた。

「そのいなくなった女の子の持っていたものとかじゃないっすか?」

莉子ちゃんが持っていたもの……。

携帯電話。そうだ、携帯電話だ!携帯なら埋めることも可能だろう。

「そうか、分かったぞ、松尾!」

俺は興奮して松尾の両肩を持つ。松尾は驚く。

「携帯電話だ!莉子ちゃんの携帯電話をあそこで処理したんだ。土に埋めて」

松尾は俺のテンションについてこれていない。でも、そんなことどうでもいい。

間違いない。莉子ちゃんの部屋から唯一無くなっていたもの。携帯電話。もし持って動き回ったら、GPSなどで足がつくかもしれない。そう考えると、大阪のあの場所で処理しておきたかったのもうなずける。

「先輩、もうすぐ会社っす」

たしかにもう会社は見えるとこまで来ている。

「このまま出社するんすか?」

「え?」

興奮している俺を横目に松尾は冷静に言う。松尾を見ると、悪だくみをする顔をしていた。

「先輩、今すぐ大阪に戻りたいんじゃないっすか?」

「…………」

それはその通りだった。もう本当に時間がない。心菜のためにも一秒でも早く事件を解決しなければいけない。

「先輩は僕が入社してから、一度も欠勤したことないっすよね」

松尾が入社してからどころか、一度も欠勤はない。こないだの有給も初めて取ったくらいだ。

「一回くらい休んでも、バチ当たらないっすよ」

どうやら松尾は今日、会社を休めと言っているらしい。

「でも……」

「行かなきゃダメっすよ!先輩!」

急に大きな声を出す。やめてくれ、周りから見たら後輩に叱られているダメ先輩みたいじゃないか。

「今日は会社なんか行ってる場合じゃないっす」

「でも……」

「でもじゃなくて!」

「違うんだ、松尾」

そりゃ俺だって会社を放り出して大阪に戻りたい。

「……明日のプレゼン、俺、何も出来てないんだ」

松尾と組まされたプレゼン。俺はここのところ事件やらなんやらで仕事が手に着かず、ほとんど出来ていない。今日、残業して明日までに間に合わせようとしていた。

どうせ松尾は特に何もしていないだろう。

松尾は急にリュックサックを前にかつぎ、中から何かを取り出そうとしている。

「どうした?」

松尾はノートパソコンを取り出すと、少しだけいじり、俺に見せてきた。

そこには数十枚のプレゼンテーションがあった。

「これって……」

「明日のプレゼンです」

ざっと目を通した感じかなりよく作られている。丁寧にプレゼン内容が分かるように。

「先輩」

「…………」

「任せてください」

俺はしばらく考え込む。でも、結論は決まっているようなものだった。

「ありがとう。俺、大阪行くわ」


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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