明日何しようかな?#122

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

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心菜


「うん」

私と景子は大きくうなずく。ついにタイムカプセルを掘り起こすときが来た。

光輔は金属探知機を組み立てる。手際よく出来上がった金属探知機を持って、あたりをウロウロする。当たり前だが、地面の色などではどこに埋めたか判断できなかった。

「このへんじゃなかった?」

光輔は一メートル四方ほどの範囲に金属探知機をかざす。


ピーーーーーーー


あっという間に反応がある。光輔はどや顔で金属探知機をスコップ持ち変える。年月は経っているけど、光輔の仕草は九年前と何も変わってない。

景子の表情を見ると、同じことを思ってそうだった。「そこまでする必要ある?」「タイムカプセル見つけるのに金属探知機使うやつなんかいないよ」「だいたいなんでお父さんそんなもの持ってるの?」そんなセリフが聞こえてきそうだった。だけど、言わないのは景子が大人になったからなのかもしれない。

「じゃーん」

結局、光輔は落とし穴でも作るのかなってくらい穴を掘った。そして、しっかりとあの日埋めたタイムカプセルを見つけた。

「やっぱりそんなに深く掘らなくていいよ」

景子は我慢しきれずにつぶやく。

「これでいいんだよ、これで」

手を土まみれにしながら、光輔は答えた。

「さあ!」

三人を結ぶ正三角形の中にポツンとタイムカプセルが置かれている。

「……誰が開ける?」

「光輔でしょ」

景子が即答する。私も同意だよと、目配せする。

光輔はしゃがみこみ、缶をぐるぐる巻きにしているテープをはがし始めた。ソフトボールくらいのテープのゴミが出来上がり、缶はフタを外すのみになった。ちょっとだけ錆びついてはいるが、たぶん中のものにはダメージは無さそうだ。

「開けるよ?」

光輔がフタを外す。手紙が三通、おもちゃが二つ、CDが一枚。しっかりとあの日のまま残っていた。

「「「おお~」」」

三人とも声が漏れる。

「懐かしい!そうだ、そうだ、俺フィギュア埋めたんだ」

光輔はタイムカプセルに入ったフィギュアを取り出す。それを見て景子は黙って、CDを取り出す。

「どうした?」

「……いや、ごめん。私、正直覚えてた」

景子は苦笑いする。

「ええ!?それ言う?」

「光輔もぶっちゃけ覚えてたでしょ?」

CDを片手に景子が光輔を問い詰める。

「…………うん」

その途端、三人は大笑いする。

「だってわざとらしかったんだもん。「そうだそうだ」って」

「やめろよ」

「そりゃ覚えてるよ。中学生だもん」

私はこっそりたまごっちを取り出す。

「心菜も覚えてたでしょ?」

私は返事をしない。

「覚えてなかったの?」

光輔に聞かれる。私は正直にうなずく。するとまた、三人で大笑いする。

「嘘でしょ?」

私は本当に覚えてなかった。何か懐かしいものを埋めたのは覚えていたけれど、それが何か全くもって覚えていなかった。

「心菜らしいっちゃ、心菜らしいか」

景子は笑いながらからかう。

「だって、そんなの覚えてないよ」

「まあ嘘ついて「懐かしい~」とか言うやつよりマシだよ」

「おい、やめろよ」

「あんなバレバレの演技、久しぶりに見たわ」

「だって覚えてたらタイムカプセルの面白いところが台無しだろ?」

「でも、あの演技はないわ~」

「やめてよ!」

私は二人の言い争いを止める。昔だったら、ブツブツ言いながらけんかが終わった。だけど、今日は三人ともニコニコが止まらなかった。

「久しぶりに景子が悪口言ってるの見た」

光輔が呟く。それはその通りだった。冷たくて、ツンツンしてる景子を久しぶりに見た。最近はどこか元気のない落ち込んだ景子しか見てなかったから。

「ほら、時間もないんだからちゃっちゃと手紙読も」

景子は照れているのを隠すように言った。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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